トヨタ・シエンタ
シエンタ("SIENTA")は、トヨタ自動車が生産・販売するミニバン型乗用車である。
2019年8月に、日本自動車販売連合会の統計においてミニバンとしては史上初めて登録車の新車販売台数月間1位を記録した。
2001年デビューのホンダ・モビリオ、シエンタと同じく2003年デビューの日産・キューブキュービックに続くコンパクトサイズのミニバン。ボディサイズは小型だが3列シートを備え、7人乗車を可能としている。月間販売目標は7000台。
後席に両側スライドドアを採用し、一部グレードでは助手席側が電動式になり、運転席側はオプション設定。取扱ディーラーは発売当初はトヨタカローラ店およびネッツ店で、2006年5月のマイナーチェンジ以降はカローラ店のみ。
ボンネット先端中央に取り付けられているエンブレムは、頭文字のSを象った曲線に、車名の由来となった「7」を表す7個の点を左右に配したものである。
発売当初の生産拠点はトヨタ自動車高岡工場だったが、2006年5月のマイナーチェンジ実施時にダイハツ工業京都工場に移管された。
代替車種とされていたパッソセッテ/ブーンルミナスの売れ行きが著しく不振だったこともあって計画が変更され、2010年8月に一度販売を終了したがわずか9か月後の2011年5月に安全装備の追加などの法規制対応が施された上で生産・販売が再開された。
プラットフォームはフロントがCP20系ファンカーゴ用のNBCプラットフォーム、2列目・3列目シートを内包し負荷のかかるリヤはE120系カローラスパシオ用のMCプラットフォームと、前後で異なるプラットフォームが使用されている。
リアのプラットフォームに1クラス上のカローラスパシオ用を選択した事でリアのトレッドがフロントより20mmも広く、このクラスのFFベース車としては稀な足周り構成となっている。
また、NBCプラットフォームを使用した他の車種で4WD車を選択した場合、リアサスペンションがトーションビームもしくはトレーリング車軸式になるのに対し、シエンタはE120系カローラシリーズと同じくダブルウィッシュボーン式となる。
当時世界最薄とされたアルミメッキ鋼板製薄型燃料タンクを採用。トヨタではグランビアの頃からすでに扁平型燃料タンクを採用していたという。従来の設計でもタンク高は約15cmまで下がっていたが、シエンタではさらに約12cmまで薄型化され、2列目シート下から3列目シートの足元にかけて設置されている。これにより3列目シートを2列目シートの下に収めることができた。3列目シートはヘッドレストを付けたまま2列目シートの下に収納可能となっており、これにより荷室部分を有効に活用することができる。このシートの収納は主なユーザーが女性ということもあり、操作は特に大きな力を必要とせず片手で行えるよう考えられている。
エンジンは1NZ-FE型直列4気筒1,500ccエンジンのみ。FF車用はVVT-i対応ローラーロッカーアーム式DOHC16バルブ、4WD車用はVVT-i対応直打式DOHC16バルブとなっており、最高出力や最大トルクがそれぞれ異なる。トランスミッションはFF車がCVT、4WD車は4速ATで、FF車用のメカニズムがより低抵抗高効率型になっている。4WD車はメカニカルロスや重量増による燃費悪化に対し、ガソリンタンク容量を3リッター増やす事でFF車と同等の航続距離を確保している。
4WDシステムはリアデフ直前にトルク配分と差動制限を両立させるビスカスカップリングを配置した、Vフレックスフルタイム4WDが採用されている。通常の直進走行時には前100%・後0%とほぼFF車に近い駆動力配分なのに対し、コーナリングやスリップ時など前後輪に回転差が生じた場合には、最大で前50%・後50%まで自動で変化させるシステムである。
4WD車は2003年の発売開始当初より、2011年以降の再生産モデルではFF車においてもパンク修理キットが標準装備となっているが、いずれもメーカーオプションにて応急用タイヤを搭載する事は可能である。その場合、4WD車はデッキアンダートレイが、FF車はデッキボックスが装備されなくなる。
メーカーオプションで寒冷地仕様を選択した場合、一般的に電装系の負荷増に対応して容量の大きいバッテリーサイズに変更されるが、シエンタは標準仕様と同じサイズ(46B24R)が搭載される。
全車にアナログ指針式の速度計と回転計を搭載したセンターメーターが採用され、上級グレードや特別仕様車の一部ではオプティトロンメーターとなる。
約12年ぶりにフルモデルチェンジを実施した2代目は、「ユニバーサルでクールなトヨタ最小ミニバン」として開発が行われた。
エクステリアは、「ミニバン=四角いハコ型」というこれまでの概念を打ち破り、「Active & Fun」をキーワードに「トレッキングシューズ」をイメージした機能性と動感を表現。サイドビューは、シアターレイアウト(後席にいくほど高くなる乗員配置)に沿ったサイドシルエットやベルトラインによりキャビン全体を前傾に見せる手法を採った。また、フロントはヘッドランプからフォグランプ・グリルへと一筆書きのようにつながるバンパーガーニッシュを採用し特徴的な表情を創出。リヤにもコンビネーションランプとバンパープロテクターを融合させたバンパーガーニッシュを採用した。
ボディサイズは、先代モデルに対して全長は135mm、ホイールベースは50mm延長され、全高は2WD車が5mm、4WD車が15mm高くなった。一方、全幅は1,695mmと変わらず5ナンバー枠内のサイズを維持した。
インテリアは、インストルメントパネルはアッパー部とロア部で構成され、ロア部にはスイッチなどの操作系を腕の動きに沿って配置。オレンジのアクセントカラーやサテンメッキ・ピアノブラックの加飾を施し、助手席アッパーボックスにもオレンジ加飾を施した。
ハイブリッドバッテリーをセカンドシート足元の下、薄型燃料タンクをセカンドシート下に搭載することで低床フラットフロアを実現。スライドドアの乗り込み高さを330mm(2WD車)と先代モデル比で55mm低くし、ドア実開口幅も50mm拡大した665mmとして乗降性を高めた。また、座席のヒップポイントを後席に行くほど高くしたレイアウトとした。セカンドシートはニークリアランスを25mm拡大して足元のゆとりを確保。サードシートはシート幅を70mm拡大した幅広のベンチ風シートを採用。セカンドシートにはワンタッチで折りたためるタンブル機構を、またサードシートは、セカンドシート下に格納できるダイブイン格納機構を備え、多様なシートアレンジや大容量ラゲージスペースを創出できる。
パワートレインにはモデル初となるハイブリッド車を新設定した。同社のコンパクトハイブリッドカー「アクア」に搭載されていた1.5Lハイブリッドシステム(リダクション機構付THS-II)をベースに、直列4気筒DOHCの1.5Lエンジン「1NZ-FXE」型とモーターには新形式の「2LM」型を採用した。システム最高出力は73kW(100PS)を発生する。トランスミッションは電気式無段変速機を組み合わせ、駆動方式は2WD(前輪駆動)のみの設定。2015年7月の発売時点ではミニバントップレベルのJC08モード燃費27.2km/Lを実現。2018年9月のマイナーチェンジでは、細部の改良によりさらに燃費が改善された。
ノンハイブリッド仕様車は(2WD車のみ)新規開発のガソリンエンジンである「2NR-FKE」型を採用した。こちらは同年3月から既存の2代目カローラアクシオ/3代目カローラフィールダーより先行搭載されていたもので、アトキンソンサイクル、クールドEGR、VVT-iEなどを採用し、アイドリングストップ機能「Stop & Start System」を標準装備したことでJC08モード燃費は、先代モデルの19.0km/Lから、20.6km/L(X"Vパッケージ" 。X、Gは20.2km/L)に向上した。なお、最高出力/最大トルクは、先代モデルが搭載していた「1NZ-FE」型に対し1kW(1PS)/5N・m(0.5kgf・m)低下し、80kW(109PS)/136N・m(13.9kgf・m)を発生する。一方、4WD車は、先代モデルに引き続き「1NZ-FE」型を継続搭載。先代モデルとの比較で、最高出力は1kW(2PS)、最大トルクは6N・m(0.6kgf・m)低下し76kW(103PS)/132N・m(13.5kgf・m)を発生。4WD車は「Stop & Start System」は未設定なものの、JC08モード燃費は先代モデル比1.4km/L向上し15.4km/Lとなった。
サスペンション形式は前後共に先代モデルと同じ形式を採用した。フロントはマクファーソンストラット式、リヤは2WD車がトーションビーム式、4WD車にダブルウィッシュボーン式を採用。また、リヤブレーキはリーディングトレーリング式ドラムからディスク式に変更となった。また、ホイールハブが先代の4穴から5穴(PCD100mm)へと変更されている。
安全性能では、衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense C」を全車にメーカーオプション設定。プリクラッシュセーフティ(レーサーレーダー+単眼カメラ方式)、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームの3つ機能で構成される。なお、2018年9月のマイナーチェンジでは、プリクラッシュセーフティに昼間での歩行者検知機能を加えたほか、インテリジェントクリアランスソナーを設定する等の改良が実施されている。
ガソリン車には、先代同様ウェルキャブ(福祉車両)を設定。2代目では、車いすのままスロープを乗降できる「車いす仕様車(タイプI)"助手席側セカンドシート付"」が「型式指定自動車」として設定。持ち込み登録の手間が省かれ、納車までの期間が短縮されるメリットがある。リクライニング機構付車いすなど、多様な車いすの乗車に対応したほか、後輪にエアサスペンションを採用した車高降下機構により9.5度の緩やかなスロープ角度を実現した。助手席側のセカンドシートを倒して車いすごと乗り込み、その隣に介助ができるほか、手動スロープ前倒れ機能の採用により、普段はラゲッジスペースを確保した2列/5人乗りの“普通のクルマ”として利用できる。
ハイブリッド車ではタクシーとして採用している事業者もある。
また、先代に設定していた、「DICE」はモデルチェンジを機に廃止となった。
インドネシアのトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア(TMMIN)の西ジャワ州カラワン工場、中華民国(台湾)・桃園市中壢区の国瑞汽車でも生産される。
なお、2代目は先代に引き続き、香港・マカオ(いずれも中華圏特別行政区)市場でも販売されるが、こちらは日本からの輸出となる。