トヨタ・ヴィッツ
ヴィッツ("Vitz")は、トヨタ自動車が販売していた1.0L - 1.5Lクラスのハッチバック型乗用車である。日本国内では一貫して新旧ネッツ店でのみ取り扱われていた看板車種の一つであった。
国内では「ヴィッツ」、国外では「ヤリス」と名を区別されていたが2020年2月10日発売の4代目から、車名が日本国内・国外ともに「ヤリス」に統一された。
スターレットの事実上の後継車にあたり、欧州ではBセグメント(初代を除く)に、北米ではサブコンパクトカーに分類される。初代から欧州でも生産・販売されており、現在日産・キャシュカイに次いで欧州で売れている日本車となっている。2017年時点での世界販売台数は52万台で、トヨタ車の中ではカムリやプリウスを凌いで5番目に売れる世界戦略車であるが、一方で日本と欧州だけでその9割を売り上げるという特殊な市場構成となっている。
初代型の登場した1999年当時の日本では、デミオやマーチにロゴといったコンパクトカーも存在したものの、基本的には作り込みより価格の安さに重きが置かれていた。また世間では従来からのセダンに加え、新たに誕生したミニバンやクロスオーバーSUVなどが人気を占めていた。
しかしヴィッツはギリシャ人デザイナーのソティリス・コヴォスによる革新的なデザインや室内空間の広さ、衝突安全性能、環境性能の高さで従来のセダンの購入層をも魅了し、国内外で爆発的なヒットを記録。5ドアコンパクトカーブームを引き起こし、世界のコンパクトカー市場に大きな影響を与えた。その意味でも、これらの車種は日本だけでなく「世界の小型車を変えた存在」として現在でも評価が高い。
ホットハッチとしての需要も高く、ディーゼルターボ用ユニットと大容量ラジエーターを「RS」に装着した『ヴィッツRSターボ Powered by TRD』、1.8Lスーパーチャージャーを備える『ヴィッツGRMN』のような過激なものも公式に発売されている。またモータースポーツでもWRC(世界ラリー選手権)でチャンピオンとなった他、ヴィッツ限定のワンメイクレース「ネッツカップヴィッツレース」、同じくワンメイクラリー「TRDヴィッツチャレンジ」(現TGRラリーチャレンジ)が開催されるなど、プロから初心者まで幅広く親しまれる車種となっている。
当初のラインナップは1.0L 直列4気筒DOHC16バルブ1SZ-FE型 (70PS) のモデルのみのリッターカーである。フォード・Kaらが属するAセグメントの市場に登場した。1999 - 2000日本カー・オブ・ザ・イヤーをプラッツ・ファンカーゴとともに受賞(トヨタとしては初の3連覇となった)。欧州カー・オブ・ザ・イヤーも受賞。それまで販売台数で上位にあったカローラ(セダン)を上回る販売台数となり、日本国内外に影響を与える車になった。
インテリアはエクステリアと同様に丸みを帯びた斬新なデザインであり一部グレード、タコメーター仕様を除きデジタルセンターメーターが搭載された。当時としては珍しくインパネには灰皿らしきケースが存在するがコインケースとなっている。
中国の天津一汽夏利汽車に技術供与され、威姿 (Vizi) として発売していたが、 2012年6月生産終了(搭載エンジンは1SZ・8A)。
オプション設定でカラーコーディネートパッケージがある。
日本国内での月間販売目標は1万台と発表された。欧州でも2代目ヤリスとして発売。また、今回のモデルからは北米でもヤリスハッチバックとして販売されている。
プラットフォームを刷新し、ボディサイズが一回り大きくなり、全幅は5ナンバーサイズとしてはほぼ上限の1,695mmとなった。また、衝突安全性が大きく強化され、衝突試験速度を従来の50km/hから衝突時のエネルギーがおよそ2割増える55km/hに引き上げている。日本仕様のエンブレムには“N”をかたどった物を採用。以降ネッツ店で専売となる車種にも採用されている。日本向け仕様と台湾向け仕様は5ドアのみ。日本国外仕様には引き続き3ドアが設定される。
エンジンは前輪駆動車にはダイハツ工業製造の1.0L直列3気筒DOHC12バルブ1KR-FE型エンジン、および1.3L直列4気筒DOHC16バルブ2SZ-FE型エンジン、自社製造の1.5L直列4気筒ローラー・ロッカーアーム式DOHC16バルブ1NZ-FE型エンジンを、四輪駆動車には自社製造の1.3L直列4気筒DOHC16バルブ2NZ-FE型エンジンをそれぞれ設定。また、欧州仕様では1.8Lの2ZR-FE型エンジンや1.4Lディーゼルターボの1ND-TV型エンジン、中国仕様では1.6Lの4ZR-FE型エンジンの設定もある。トランスミッションはトルクコンバータ付CVTを基本にスポーティグレードの「RS」には5速MTも設定、四輪駆動車は従来形のトルコン付遊星歯車ギアの4速ATのみとなる。
一部グレードには「スマートエントリー&スタートシステム」を設定。これはスマートキーを携帯することにより、ドアハンドルやスイッチで施錠・開錠ができるスマートエントリーと、プッシュボタン式エンジンスイッチのスマートスタートをサポートする。メーター類はアナログ仕様のみとなっているが、ヤリスにはデジタルメーター仕様もある。
アウタードアハンドルは初代のフラップ式からグリップ式に変更となった。また、前期型に限っては電波時計が装着されていたが、後期型では電波時計ではなくなっている。
「RS」は前輪駆動1.5Lとなり、また、欧州および北米でも「TS」として販売された。日本仕様にはディスチャージヘッドランプが標準装備されたが、欧州仕様のヤリスにはハロゲンヘッドランプのみを設定。
初代後期型に続いて、グレードに応じてLEDリアコンビランプ(制動灯のみ)が設定されていたが、3代目からは全グレードで標準装備となった。
また2011年には、欧州市場において、ダイハツに5代目シャレードとしてOEMされ、2013年1月まで販売された。なお、このモデルはダイハツの欧州販売最終モデルで、シャレードの販売終了をもって、ダイハツは欧州市場から撤退した。
台湾市場においては、2014年3月時点でも当代が販売されていた。
Cd値0.285の優れた空力性能を実現し、低燃費と高速走行における走行安定性を実現した。全長は先代に比べ拡大し、1994年から1999年にかけて生産されていたL50型ターセル3ドア/コルサ3ドア/カローラIIとほぼ同じサイズとなったものの、2代目と同様に全幅1,695mmの5ナンバーサイズを保ち、最小回転半径を4.5m(「U」は4.7m、「RS」は5.6m)に抑えた。先代に引き続き、日本仕様は5ドアのみ、3ドアは日本国外仕様にのみ設定(ただし、後述する「Vitz GRMN Turbo」は例外)される。なお、5ドアと3ドアとではボディ後方のサイドウィンドウのデザインが異なる。
前席にはホールド性の高い新骨格のシートを採用。後席は全長の拡大により室内長も拡大されたことで足元のスペースが拡がり快適性を向上。インテリアでは初代・2代目で採用されていたセンターメーターを廃止してオーソドックスなアナログメーターに変更(「F」・「Jewela」はタコメーター非搭載)し、また、「U」・「RS」のインパネおよびドアトリムの一部にはソフトパッドを採用。そのほか、フロントドアガラスには高性能UV吸収剤を使用したことで紫外線を約99%カットし、手袋や日焼け止めを使用した時と同等の効果が得られる世界初の「スーパーUVカットガラス」を採用。
エンジンは1.3L車がダイハツ工業と共同開発し、Dual VVT-iを採用した1NR-FE型に変更(1.0L車・1.5L車は先代に搭載されていたエンジンを踏襲)、また1.3L・前輪駆動車にはToyota Stop & Start Systemと呼ばれる、常時噛み合い式のスターターモーターとワンウェイクラッチを使用し、エンジンの再始動時間を従来より短縮したアイドリングストップ機構搭載車を設定。26.5km/L(10・15モード燃費)の優れた低燃費を実現した。欧州仕様では先代に引き続き、1.4Lディーゼルターボエンジンも設定している。トランスミッションは5速MTが選択できる「RS」を除く全車でCVTのみの設定となり、燃費も向上。欧州仕様には6速セミATの設定もある。四輪駆動車は「平成17年基準排出ガス75%低減レベル(☆☆☆☆)」と「平成22年度燃費基準+15%」を、1.5L車は「平成22年度燃費基準+25%」をそれぞれ達成した。
なおリアのナンバープレート位置が初代・2代目のバンパー上からバックドア上に移動となり、2代目ラクティスと同様に、フロントワイパーが効率性重視のためシングルワイパーに変更され、助手席シートベルト非着用警告灯(現在は運転席警告灯と兼用)および前席のアジャスタブルシートベルトアンカーを廃止、また、車体色に関してはおよそ10年ぶりにスーパーホワイトII(色番号・040、「Jewela」を除く)が復活した。
スポーティードレスアップシリーズ「G's」は、「RS」をベースとして外装に専用デザインのバンパー・フロントグリル・大型マフラー・フロントLEDイルミネーションビームを装備し、ヘッドランプとリアコンビネーションランプにブラック加飾が施された。インテリアもシートが「G's」のロゴ入り専用表皮へと張り替え、インパネパネルとドアトリムにカーボン調の加飾が施され、ペダルは滑り止め防止ゴム付きのアルミ製へと変更されている。ボディはロッカーフランジの溶接スポット増しと前部補強ブレースで強化し、さらにアンダーボディへ空力パーツを追加して空力性能を適正化、そこへG's専用チューニングを施したサスペンションと高剛性・軽量設計の17インチアルミホイール & 205/45R17タイヤ(ブリヂストン・ポテンザRE050A)を組み合わせて足回りを強化し、操縦安定性とハンドリング性能を高めた。なお、当車種は「G's」モデルにおいて唯一のマニュアル・トランスミッション設定車となっていた。
2017年9月に「G's」に替わるスポーティードレスアップシリーズとして設定された「GR SPORT」は、外観は「Functional MATRIX」グリルと専用エンブレム(前後、サイド)を装備。内装には「GR」ロゴ入りの専用スポーティシートと専用スタートスイッチを装備し、ドアトリムやフロントシートなどに専用加飾やシルバーステッチを施した。また、ヴィッツ「GR SPORT」専用装備として専用チューニングサスペンションを装備し、スポット打点を追加。さらに、「GR SPORT"GR"」では、ザックス製ショックアブソーバーやブレースが追加され、10速スポーツシーケンシャルシフトマチック(CVT車のみ)、アルミペダル、小径ステアリングホイールを装備。なお、「G's」の場合同様に「GR」シリーズでは唯一となる5速MTが設定(2017年9月時点)されており、「GR SPORT」にはガソリン車に加え、ハイブリッド車も設定される。また、「GR SPORT」は「GR」シリーズで唯一の型式指定での登録となる。
グレード体系は2代目とは様変わりし、専用ボディカラーや内装色を設定し、メッキ加飾を施して華やかさを表現した「Jewela(ジュエラ)」を新設するとともに、既存グレードはベーシックグレードの「F」、本革巻ステアリング&シフトノブや快適温熱シートなどを標準装備し、高い質感と快適性を追求した上級グレードの「U」、専用デザインのエクステリアや専用スポーツシート、7速スポーツシーケンシャルシフトマチック&パドルシフトまたは5速マニュアルが選べるスポーツグレード「RS」の全4グレードに整理された。また、「F」の1.0L車には装備内容を簡素化(乗用車全体的に見ても珍しい手動式リアウィンドゥガラスなど)したビジネスユーザー向けの「Mパッケージ」、「RS」には装備内容を簡素化して価格を引き下げた「Cパッケージ」がそれぞれ設定されている。2代目後期型に標準装備されていたSRSサイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグが全車メーカーオプションとなったにもかかわらず、車両本体価格は上昇した。特に1.5L車の車両本体価格は、2代目と比較して大幅に値上げされた。
なお、2014年4月のマイナーチェンジ後は2010年12月販売型のグレード体系を引き継ぐが、「SMART STOPパッケージ」は1.3Lの前輪駆動全グレードに標準設定とし、「RS」のMT車を除く1.0L車・1.5L車全グレードにも新たに設定した。「RS」に設定されていた「Cパッケージ」は廃止された。SRSサイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグについては引き続き、全車メーカーオプション扱いである。
2017年1月のマイナーチェンジではスポーティーグレードの「RS」が廃止され、ハイブリッド車の設定に伴って「U」の1.5L車も廃止(これにより、「U」は1.3L専用グレードとなる)。ハイブリッド車は非ハイブリッド車(ガソリン車)と共通のグレード体系とし、「HYBRID F」・「HYBRID Jewela」・「HYBRID U」が設定され、「HYBRID U」には「Sportyパッケージ」も設定される。この「Sportyパッケージ」は非ハイブリッド車の「U」にも設定される。SRSサイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグは2010年12月販売型・2014年4月改良型に続き、全車メーカーオプション設定となる。なお、この改良によって国内仕様からMTの設定が一旦消滅したが、2017年9月に「RS」「RS"G's"」に替わるスポーツカーとして設定された「GR SPORT」「GR SPORT"GR"」にMTが設定され、8か月ぶりに復活した。
北米仕様は日本仕様とは異なり、5ドアと3ドアの2種類で展開される。エンジンは1.5Lの1NZ-FE型のみ搭載され、グレードはベーシックグレードの「L」(カナダでは「CE」)、クルーズコントロール、キーレスエントリーなどを装備した中級グレードの「LE」、16インチアルミホイール、4輪ディスクブレーキ、スポーツサスペンションなどを装備したスポーティグレードの「SE」という構成で、「SE」は5ドアのみの設定となる。装備に関しては運転席・助手席エアバッグ、運転席・助手席サイドエアバッグ、カーテンエアバッグのほか、運転席・助手席シートクッションエアバッグ、運転席ニーエアバッグの合計9つのエアバッグ、VSC&TRC、タイヤ空気圧警告灯などが全車で標準装備される。
なお、4ドアセダンのグレード「iA」は、マツダのメキシコ工場で製造されるマツダ・デミオ(現・MAZDA2)のOEMである。
2017年6月マイナーチェンジ。
北米仕様と同様、5ドアと3ドアの2種類で展開される。運転席・助手席エアバッグ、運転席・助手席サイドエアバッグ、カーテンエアバッグのほか運転席ニーエアバッグの合計7つのエアバッグ、VSC&TRC、アイドリングストップ機構、ガラスルーフ、レインセンサーワイパーなどが装備されている。2012年6月に登場したハイブリッド仕様(NHP130L)にはさらにヒルスタートアシストなどが装備される。
2017年3月マイナーチェンジ。日本仕様と同じデザインだが、リアフォグランプの位置が異なる。
「Vitz」は、英語の「Vivid」(鮮やかな)とドイツ語の「Witz」(機知)を掛け合わせた造語である。
「Yaris」は、ギリシャ神話の美の女神「カリス(Charites)」の単数形「Charis」からの造語である。
日本国外では「YARIS」(ヤリス)の名称で販売されている。なお、初代はカナダ・オーストラリアでは「ECHO」(エコー)、中国では「Vizi」(威姿)を名乗っていたが、2・3代目は国内を除いて全てヤリスハッチバックに統一された。さらに国外では姉妹車であるベルタが初代ヤリスセダン(中国・東南アジアでは2代目ヴィオス)を名乗り、さらに中国・東南アジア市場専売のヴィオスも3代目より北米市場・オセアニア市場に限りヤリスセダンの名で販売される。同じく姉妹車のファンカーゴはヤリスヴァーソを名乗っている。
日本では「ヤリス」という言葉の持つ響きがあまり好ましくないため、「Vitz」という名称となった(初代発売当時のdriver誌の記事より)。逆にイギリス英語使用圏では「Vitz」の読みが「Bit(s)=「わずか」「噛んだ(過去形)」」に聞こえてしまうため、日本のみ「Vitz」、日本国外では「ヤリス」、という住み分けがなされている。このように 地域ごとに異なる名称が与えられているが、その影響としてヒュンダイ・ゲッツの日本名が、開発コードの「TB」とされたということがある(「ゲッツ」の名称を用いている欧州では名称がヴィッツではなく「ヤリス」であるために問題はなかったが、日本市場では「ヴィッツ」と「ゲッツ」ということで名前が似てしまう点が現代側の名称変更の理由のひとつとして挙げられている)。
同車発売より前から愛知県豊田市中心部にヴィッツ豊田タウンという商業施設がある。
スポーツコンバージョンモデル「G's」よりさらにハードなチューニングが施される本格的なチューニングカーブランドの「GRMN」において、「iQ GRMN」「iQ GRMN Supercharger」に続く第3弾として「ヴィッツ GRMNターボ」が企画され、2013年に200台が限定販売された。
ボディ剛性を確保するため、日本市場では導入されない3ドア仕様車(豪州・英国市場向け)をベースに車体の前後アンダーボディへ専用開発の補強ブレースを装着した上でGRMN専用チューニングのサスペンションを組み込み、ADVICS製のGRMN専用対向4ポットキャリパーの採用でブレーキを強化し、さらにホイールハブを標準の4ホールからラクティスと同じ5ホール(PCDは100mm)へと変更し、強化型ロアアームを採用することでサスペンション全体の剛性を高めている。駆動方式はFFのみの設定で車両車重は1070㎏である。
エンジンは「RS」の1.5Lエンジン(1NZ-FE型)をベースとしてターボチャージャーを組み合わせることで最大出力は32kW(43PS)向上させ112kW(152PS)/6000rpmに、最大トルクは206Nm(21.0kgm)/4000rpmに引き上げられており、エンジンのチューニングに加えてVSCやABSなども専用のチューニングを施して「走る・曲がる・止まる」といった基本性能を大幅に向上させている。
トランスミッションは5速マニュアルトランスミッションのみである。
外装は「GRMN」のロゴがプレスされた専用の外板が与えられるほか、専用エアロパーツ(フロントバンパー&ヘッドランプレンズはヤリス・ハイブリッド前期モデル、リアバンパーはG'sからの流用となる)とBBS製鍛造17インチアルミホイール(同社の市販品「RF」をベースにしたGRMN専用開発品)に215/45R17タイヤ(ブリヂストン・ポテンザRE050A)を組み合わせる。
内装はトヨタ紡織製のGRMN専用スポーツシートとGRMN専用アナログメーターに加えて本革巻き3本スポークステアリングホイール(レッドステッチ付)などを装備し、後部の軽量化のために一体可倒式リアシートを採用した。ボディカラーは「スーパーホワイトII」と「ブラックマイカ」の2色である。
同年8月25日より専用サイトにて先着順による商談受付を行い、商談は、スポーツカー「TOYOTA 86」の発売と同時に設けられ、カスタマイズやチューニング等に精通した「マスタースタッフ」を常駐させている「AREA 86」設置店舗のネッツ店にて行われ、限定200台はすべて完売した。
トヨタがWRCに復帰した2017年の、フランクフルトモーターショーにてヤリスGRMNの発売が正式発表。日本向けは「ヴィッツGRMN」の名で、フロントマスクも「GR」風の四角いグリルに変更されている。ヤリスGRMNは400台、ヴィッツGRMNは150台の限定生産。
エンジンは2ZR-FE型1.8L直列4気筒ガソリンエンジンをロータスがチューニングし、スーパーチャージャーで過給。最大出力は212hp/6800rpm、最大トルクは25.5kgm/5000rpmを発生する。トランスミッションは6速MT(歴代ヴィッツで唯一の6速MT搭載車でもあった)のみ、駆動方式は前輪駆動。車両重量は1,135kgで、パワーウェイトレシオは5.35kg/hp。0~100km/h加速6.3秒、最高速230km/h(リミッター作動)のパフォーマンスを実現する。
トルセンLSDを装備し、サスペンションやボディも強化。ブレーキローター径はフロントが275mm、リアが278mmと大径化。17インチのBBS製軽量ホイールに、ブリヂストン「ポテンザRE050」の205/45R17サイズタイヤを組み合わせている。
TOYOTA GAZOO Racingは、2017年から復帰する世界ラリー選手権(WRC)に、WRカー規定の下に改造したヤリスWRCを採用。2戦目ラリー・スウェーデンで早くも勝利を挙げると、2年目の2018年には5勝をマークしてマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得した。翌年2019年にはオイット・タナク/マルティン・ヤルヴェオヤ組が6勝をマークし、セバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組の7連覇を阻止してドライバーズ/コ・ドライバーズチャンピオンとなっている。
地域選手権ではキャロッセ(クスコ)や豪州法人がAP4規定(アジアパシフィックラリー選手権の規定)に合わせたヴィッツを開発し、2017年JSR(日本スーパーラリーシリーズ)、2019年豪州ラリー選手権のドライバーズチャンピオンを獲得。また南アフリカのラリー選手権でも現地法人が独自にスーパー2000規定のヤリスを開発し、2015年および2016年にマニュファクチャラーズタイトルを獲得するなど、ラリーのベース車両として広く活躍している。なお南アのヤリスは日本に輸入され、2018年公開のラリー映画『OVER DRIVE』で主人公たちのチームのマシン『ヤリスSCRS』として使用されているほか、JSR第2戦には撮影で使用されたものが実際に競技車両として参戦した。
市販車無改造規定下においても、小回りや信頼性の高さ、アフターパーツの多さ、参戦可能なカテゴリの手広さなどから高い人気を集めている。またドイツのトヨタ・モータースポーツ有限会社(TMG)は、入門者向けにグループR1規定のヤリスのラリーカーを販売している。
全日本ラリー選手権でも多くのエントラントがヴィッツを採用している。二輪駆動車クラスでは天野智之/井上裕紀子夫婦が2008年から継続して使用。2010年〜2014年にJN2クラスでヴィッツRS、2015年にJN5クラスでヴィッツGRMNターボ、2016年〜2018年にはJN3クラスでヴィッツRS、2019年にはJN5でヴィッツGRをそれぞれドライブし、同期間全てでドライバー及びコ・ドライバータイトルを獲得(2013年のみ川名賢/井上裕紀子組、2014年と2017年は全勝)する圧倒的な強さを見せている。イベント総合結果でも、JN3でありながら上位クラスのJN4・JN5全車を上回ることがある。
同じく全日本ラリーではスポーティなCVTを開発するため、豊田自動織機とTOYOTA GAZOO Racingはラリー用にチューニングしたCVTを搭載したヴィッツをJN3クラスに参戦させており、2017年にはランキング2位の好成績を収めている。なおこのラリーで鍛えられたCVTは、市販車のヴィッツGRに10速シーケンシャルシフト付きCVTというかたちでフィードバックされている他、2018年からプライベーターにも供給をしている。
2018年途中からTOYOTA GAZOO RacingはヴィッツGRMNもJN5クラスにエントリーさせて海外のグループR勢と激しく争っており、2019年にJN5が改称したJN2クラスのチャンピオンを獲得した。なおこの年の選手権はJN6、JN5と合わせてヴィッツが3クラスを制覇している。
サーキットでは、スーパー耐久のST-5クラスで2010年から2012年に、2代目ヴィッツが3連覇を達成している。
モータースポーツのエントリー向け車両としてもよく使用されている。
サーキットでは2000年に日本初のナンバー付き車両によるワンメイクレースとしてヴィッツレースが発足。北海道、東北、関東、関西、西日本の5地区と、TOYOTA GAZOO Racingフェスティバル(TGRF)でのグランドファイナル戦で構成されており、20年近く経った現在も多数のレース入門が参加している。
2002年にはサーキットに続き、入門者向けラリーカテゴリの「ニュースタイルワンメイクラリー TRDヴィッツチャレンジ」が発足。2012年には他のトヨタ車も含む「TRDラリーチャレンジ」、2016年にはTOYOTA GAZOO Racingが公認し「TGRラリーチャレンジ」へと発展して現在に至っている。現在同シリーズには、ヴィッツ専用のクラスが2つ存在する。
東京都では、以前はネッツトヨタ東京、ネッツトヨタ多摩、ネッツトヨタ東都で取扱っていたが、2019年4月1日の販売チャネル制度廃止に伴い、東京都内の全販売店(トヨタモビリティ東京、カローラ店系列のトヨタ西東京カローラ、ネッツ店系列のネッツトヨタ多摩とネッツトヨタ東都)で取り扱うようになった。