トヨタ・MIRAI
MIRAI(ミライ)は、トヨタ自動車が製造・販売する、量産車として世界初の高級セダン型燃料電池自動車である。
トヨタフューエルセルシステム(TFCS):自社開発のトヨタFCスタック・高圧水素タンクなどで構成する燃料電池技術とハイブリッド技術を融合したもの。水素充填は約3分で、走行距離は約650km(JC08モード)。高圧水素タンクは水素脆化が懸念されるため金属ではなく、炭素繊維や樹脂などで構成され、3層構造になっている。
太字は2018年10月の改良で追加された機能や装備
長距離走行を実現するため、水素を高圧力で圧縮してタンクに蓄積する必要があり、この圧力は70MPaで、通常大気圧(101.33kPa)の約700倍となっている。このため、部品には高い耐久性と気密性が要求され、配管や弁には愛知製鋼やジェイテクトが開発したより高強度な鋼材が採用され、燃料電池スタックにはトヨタ車体が開発した3次元構造体が採用された。また燃料電池セルには水素極側のチタン製セパレーターと水素・空気・冷却水を供給するスタックマニホールドが採用された。
発売当初のメーカー希望小売価格は消費税込で723万6,000円(2018年10月の一部改良以降は727万4,880円)。発売から1年間で400台を販売目標としている。販売店はトヨタ店とトヨペット店(東京都ではチャンネル制度廃止に伴い、2019年4月からトヨタモビリティ東京で取り扱っている)。ちなみにこの販売価格は、ドイツの自動車メーカーに「ゼロ1個間違っている。7000万円だろ」と言わしめたという。
日本の水素ステーションは2020年8月17日現在全国133カ所。2014年12月18日、東京都練馬区内に関東初の「商用水素ステーション」が、東京ガスにより開設された。経済産業省は、水素ステーションを設置する規制を緩和する方針を打ち出しており、水素タンクをより安価なクロムモリブデンで建設することを認め、また水素タンクの設置場所を「公道から8m以上離れた位置」から「公道から4m以上離れた位置」に緩和するなどして、建設費用を2014年の5億円から2020年までに2.5億円に半減させる目標をあげている。2014年12月22日、JXTGエネルギーが2020年までに国内10拠点で水素を生産し、販売面では主要な約2000店を対象に順次、水素スタンドを導入すると報道された。
2015年2月、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車の3社が水素ステーションの整備促進に向け、共同支援に乗り出すことで合意したと発表。
2016年3月10日、ホンダが発売した燃料自動車「クラリティ フューエル セル」はそれまでホンダがリースをしてきたホンダ・FCXクラリティより高圧の70MPaの圧縮水素タンクを採用し、トヨタ・MIRAIと共通化を果しており、水素ステーションの設備の共通化に貢献する取り組みとなっている。
2014年11月17日、米国トヨタによると「米国ではカリフォルニア州において2015年秋から、販売およびリースを開始する」と発表している。2015年10月21日(アメリカ時間)に発売された。この日はバック・トゥ・ザ・フューチャー PART2で主人公たちが”未来”にタイムスリップした日にちでCMにも出演した。
2014年、名前の公表されていなかった頃に新城ラリーに00カーとして登場し、トヨタ自動車社長の豊田章男がドライブ。2015年NASCARスプリントカップ第9戦リッチモンドでFCVとして初めてペースカーデビューした。
2015年には国沢光宏が自分で購入したMIRAIをラリー仕様に改修。元々全日本ラリー選手権向けであったが、このことが世界ラリー選手権(WRC)のプロモーターの耳に入り、WRC第8戦ラリー・ドイチェランドにオフィシャルカーとして初登場。トヨタも水素補給や車両運搬に非公式に協力し、ノントラブルで完走した。帰国後は本来の目的である新城ラリーに参戦。ドライバーは引き続き国沢、コ・ドライバーはデザイナー・漫画家の木原雅彦が務め、JN1クラスで2位完走を果たした。
CO2を排出しない自動車で争われるeラリーモンテカルロにも参戦し、2016年の第1回と2018年の第3回大会で優勝を果たしている。
2020年12月9日、6年ぶりのフルモデルチェンジ。FC昇圧コンバーターのSiC半導体採用や、リチウムイオン二次電池を採用したことなどにより、ユニット損失を低減させることに成功。さらにFCスタックは小型・高出力化され、新たに触媒リフレッシュ制御を導入したことにより発電効率を向上させたことで、先代比+約30%となる約850km(「G」の場合。他グレードは約750km)の航続距離を実現した。加えて、プラットフォームに既存のレクサス・LCや5代目レクサス・LS、15代目クラウンに採用されているGA-Lプラットフォームを基本としてボディ剛性を強化したものを採用したことで、駆動方式が先代の前輪駆動(FF)から後輪駆動(FR)に変更。後輪駆動化により、FCスタックはフード下に収めることが可能となり、モーターと駆動用バッテリーを後方に配置することが可能となった。同時に、最適な配置によって前後50:50の理想的な重量配分も可能となっている。
トヨタ車初採用となる「空気清浄システム」は発電のために走行時に空気を取り入れ、排出するMIRAIの特徴を活かし、吸入した空気を浄化し排出するシステムで、エアクリーナーエレメントでPM2.5レベルの細かい粒子まで捕える。
安全性の確保のついても抜かりはなく、最新版の「Toyota Safety Sense」を採用し、プリクラッシュセーフティ、レーンキープアシストなど複数の機能を進化させた。
また、最大9kWの供給が可能なDC外部給電システム、AC100V・1500Wで最大4日間の供給が可能なアクセサリーコンセントを備えることで、災害時や緊急時にも安定した電力を対応できるようにしている。
乗車定員は先代の4人から1人増え、5人に変更されている。
日本語の「未来」から。副社長の加藤光久は、公式発表で「『ミライ』しか思いつかなかった」と発言した。会見場に日本科学未来館を選んだこともこれに由来する。
光岡車以外での日本車では珍しく、スズキのキザシ(兆し)以来となる和名の車であるが、実際には和名もしくは日本語由来のトヨタ車はカムリ=冠、SAI=才・彩といった前例が存在する。