スズキ・スペーシア
スペーシア ("Spacia")は、スズキが生産・販売する軽トールワゴン(軽スーパーハイトワゴン)である。
2008年(平成20年)1月から販売されていた「パレット」に替わる実質的後継車として発表された。車種名を変えて新型車として発売される背景として、室内寸法、軽量化、燃費性能などに大きな進歩があったからとされている。そのため、パレットの特徴であった両側スライドドアや副変速機構付CVTはスペーシアにも継承されており、車両型式もパレットの「MK」を引き継いでいる。
初代モデルは5代目ワゴンRで初採用された「スズキグリーンテクノロジー」が導入され、「パレット」の一部グレードで既に導入されていたアイドリングストップシステムは全車標準装備した上で改良を行い、停車前の減速時にアクセルペダルを離した段階からガソリンの供給をカットし、ブレーキペダルを踏んで時速が13km以下になると自動でエンジンを停止することでアイドリングストップ時間を延長。ブレーキペダルを離す、ステアリングを操作する、「アイドリングストップOFFスイッチ」を押すのいずれかの動作でエンジンの再始動が可能である。併せて、坂道発進時には後退を抑制するヒルスタートアシストも装備される。
また、元々アイドリングストップシステムに搭載している鉛バッテリーに加えて高効率リチウムイオンバッテリーも搭載され、オルタネーターを高効率・高出力化したことで減速時に発生するエネルギーを発電・充電し、蓄えた電力をオーディオやメーターなどの電装品に供給することで発電に使用するガソリン使用量を最小限に抑える「ENE-CHARGE(エネチャージ)」や空調ユニットに冷房運転時に凍る蓄冷材を搭載することでアイドリングストップ中に送風運転に切り替わっても冷風を送ることが可能で、室温上昇によるエンジン再始動を抑える効果もある蓄冷技術「ECO-COOL(エコクール)」も搭載された。
エンジンは「パレット」に採用していたK6A型から小型・軽量設計のR06A型(ターボ車は同仕様のインタークーラーターボ)に置換し、ボディに最高1180MPa級の高張力鋼板板を全体の約42%に採用。さらに、ドアパネルやシートフレーム、ルーフ、ラジエーター(16 mm 厚→11.5 mm 厚)、サスペンションなど徹底した軽量化が行なわれ、特に「G」の2WD車は全高1,700mm以上の軽トールワゴンでは最軽量となる840kgを実現した。なお、フロアサイドメンバーの高張力鋼板には新日鐵住金(現・日本製鉄)製が使用されている。
後期型では、これまで搭載していた「エネチャージ」に替わり、5代目・後期型ワゴンRや初代ハスラーの一部グレードに装備されている「S-エネチャージ」を新たに搭載された。スペーシア用の「S-エネチャージ」はハスラー用と同じく、ISG (Integrated Starter Generator (モーター機能付発電機))のモーターアシスト時間を最長30秒間に、モーターアシストの速度域を発進後〜約85 km/hに向上してモーターアシストの時間と頻度を増やした改良型が搭載されている。同時に、エンジンも8代目アルトから採用されている、11.5の高圧縮比、エキゾーストマニホールド一体型シリンダーヘッドの採用、触媒ケースの簡素化などを行い、ISGの搭載に合わせて補機ベルトシステムを変更した改良型が採用された。2015年8月にはターボ車も「S-エネチャージ」に変更されたが、モーターアシストの速度域が発進後約100 km/hに拡大されている。
プラットフォームは3代目MRワゴンや5代目ワゴンRと同じ2,425mmのロングホイールベースが特徴の新プラットフォームが採用されており、インパネの内部構造やレイアウトの工夫により、室内長は2,215 mmを実現した。「G」は13インチタイヤを採用したことで、ロングホイールベースながら最小回転半径4.2mをとしたことで取り回しの良さも実現している。
2代目では、6代目ワゴンR/4代目ワゴンRスティングレーで採用された、最長10秒間、モーターによるクリープ走行を可能にするマイルドハイブリッドシステムとなったほか、プラットフォームに「HEARTECT(ハーテクト)」が採用されたことで、ホイールベースが35 mm拡大された。
2013年(平成25年)8月に衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ESPの4点が採用され、「レーダーブレーキサポート装着車」として設定された。2015年(平成27年)5月のマイナーチェンジで車線逸脱警報機能、先行車発進お知らせ機能及び軽自動車初採用となるふらつき警報の3点が加わり、セットオプションとして設定された。2017年(平成29年)12月のフルモデルチェンジでハイビームアシストとリアパーキングセンサーを追加、衝突被害軽減ブレーキと誤発進抑制機能が前方に加えて後方にも追加され、これらの装備全てが標準装備化された(オプションで非装着設定が可能だが、この場合「全方位モニター用カメラパッケージ」の装着が不可となる)。
この衝突被害軽減ブレーキは導入当初、レーザーレーダー方式の「レーダーブレーキサポート」が用いられていたが、2015年5月のマイナーチェンジで軽自動車で初採用となるステレオカメラ方式の「デュアルカメラブレーキサポート」に変更。2代目は軽自動車では6代目ワゴンR/4代目ワゴンRスティングレーに次いでの採用となる、単眼カメラ+レーザーレーダー方式の「デュアルセンサーブレーキサポート」に再変更。後方では超音波センサー方式の「後退時ブレーキサポート」が用いられている。2020年8月の一部仕様変更で初代・2型で採用された「デュアルカメラブレーキサポート」に戻されたが、夜間の歩行者の検知が可能な改良型で搭載される。
なお、先代車種のパレットでは廉価グレードを除く全車にサイドエアバッグが標準装備されていたが、初代モデルでは前述の軽量化の都合に伴い非装備となっていた。2代目モデルではフロントシートSRSサイドエアバッグだけでなく、SRSカーテンエアバッグも併せて標準装備される(SRSカーテンエアバッグは2代目へのフルモデルチェンジ当初、カスタムの「HYBRID XSターボ」のみ標準装備だったが、2020年8月の一部仕様変更でスペーシアやスペーシア ギアを含めた全グレードに拡大して標準装備された)。
初代は外観にボディ同色のフロントグリルが採用され、全てのピラーをブラックアウトしている。2013年(平成25年)8月に追加設定された「レーダーブレーキサポート装着車」ではフロントグリル下部にメッキアクセントが配された。内装はインパネにおいて上面を低くした上下2段構造とし、上部はブラウン、下部を明るめのベージュの2トーンカラーとした。後期型では外観のフロントグリル下部のメッキアクセントが新形状に変更して標準化。内装色はベージュ内装とグレー内装の2種類となり、ボディカラーに応じた設定となった。「T」はフロントグリルが上部に白色LEDのイルミネーションを内蔵したフルメッキタイプとなった。2016年(平成28年)12月の一部仕様変更で、内装色がグレーに替わってカスタム/カスタムZと同じブラック内装が標準設定となり、「X」でホワイト2トーンルーフまたはボディカラーで「クリスタルホワイトパール」を設定した場合でベージュ内装の選択を可能とした。
2代目はフロントグリルが新デザインとなり、グレードによりカラード又はメッキとなった。内装色は初代モデルの2016年12月の仕様変更時同様にブラック内装が基本となっているが、新たに赤のアクセントカラーが取り入れられた。また、「HYBRID X」に設定のベージュ内装はホワイト2トーンルーフに加え、モノトーンカラーでも全色選択が可能となった。
カスタムの初代モデルは外観のフロントグリルがスケルトン構造となり、ヘッドランプも形状を変更され、LEDポジションランプを内蔵。バンパーの形状もスペーシアから変更され、専用デザインアルミホイールを装備した。内装はブラック基調となり、エアコンルーバーリングやインサイドドアハンドルにシルバー加飾が施された。後期型ではフロントグリルにメッキを追加。内装には赤のアクセントが新たに施された。
カスタムZはボンネットフードの位置をカスタムよりも高くし、フロントグリルをブラック基調のメッキに変更の上、大型メッキフロントミドルグリルが追加され、フロントバンパーをエアロ形状に変更してLEDイルミネーションを組み込んだフロントフェイスを採用され、LEDフォグランプが装備された。ちなみに、カスタムZのディスチャージヘッドランプは、2代目ワゴンRスティングレーと同じデザインとなっているが、干渉を防ぐ為内部構造が変更されている。内装はカスタム同様ブラック基調だが、アクセントにチタンシルバー加飾が採用されている。
カスタムの2代目はフロントメッキグリルが大型化され、ヘッドランプをLED化。内装はブラックを基調に、ピアノブラック・メッキ加飾・シルバー加飾が施された。
ギアは2代目に設けられたSUVテイストのデザインとしたモデル。
丸型としたLEDヘッドランプをはじめ、メッキフロントグリル、バンパー(フロント・リア)、ガーニッシュ類(サイドアンダー・ヘッドランプ・サイドドア・バックドア)、カラードドアハンドル、カラードドアミラーをガンメタリックで統一。内装はインパネカラーパネルもガンメタリックとしたほか、撥水加工が施されたファブリックシート表皮のステッチやリング類(メーター・エアコンルーバー)の加飾にオレンジが採用された。また、インパネアッパーボックスはツールボックスをモチーフとしたデザインが採用された。
リアドアトリムには引き出し式のロールサンシェードが採用されており、2代目でも継続採用されている。
パワースライドドアには、リアアウタードアハンドル内に、スイッチの1度押しで解錠と自動開閉を行うワンアクションスイッチ備えたワンアクションパワースライドドアを採用。2代目モデルでは閉動作中にドアロックの予約が可能な「予約ロック機能」や任意の位置でスライドドアの一時停止が可能な「一時停止機能」が追加された。