スバル・インプレッサ
インプレッサ("IMPREZA")は、SUBARU(旧・富士重工業)が生産・販売する乗用車である。
レガシィが従来の主力車種であったレオーネより上級な車種へと移行したために開いた穴を埋め、世界市場、特にヨーロッパにおけるCセグメント市場を狙ったスバルの世界戦略車としての役割を担った。発売から現在に至るまで標準モデルよりスポーツモデルの販売比率のほうが高い。
パッケージングはCセグメントのセダンと5ドアハッチバックそのものだが、ハッチバックはステーションワゴンとしての使い勝手を盛り込んだ上で、新たに「スポーツワゴン」として訴求した。
なお、セダンはレオーネの廉価モデルであるセダン1600(マイア/マイアII)の後継車も兼ねる
また、年次改良や特別仕様車の積極的な投入により、日本の小型車としては異例の8年という非常に長期に渡るモデルサイクルを通じて、高い商品力を維持した。
レガシィRSに代わり世界ラリー選手権(WRC)参戦車両として最高性能が与えられたモデルには「WRX」の名が冠された。エンジンもレガシィRSに搭載されていたEJ20型・DOHCターボ(240PS)がヘッド周りを一新して搭載された。
ボディ・デザインはスバル内部によるものである。「フローイングライン」と名付けられたなめらかなシルエットなど、ほぼすべての角が丸められた柔らかなイメージを特徴としている。
車体(シャシー)は、初代レガシィの車体を基準に開発され、全長で200 mm、ホイールベースで60 mm狭められ、全高を10 mmかさ上げしている。ホワイトボディで175 kgと、初代レガシィの200 kgに対し25 kgの軽量化、車両重量では80 kgの軽量化を実現している。
トランスミッションは、NA車用として5速MTとE-4速ATが用意され、ターボ車用は、5速MTがノーマルレシオとクロースレシオ、それにE-4速AT、VTD-AWDトランスミッションが用意された。
「WRX type RA STi」、「WRX type R STi」には、「DCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)」が機械式リアLSDとの組み合わせで用意された。DCCDとはシフトレバー脇に設置されたダイヤルで前後輪のトルク配分を任意調節出来る機構である。作動原理は、電磁式クラッチを応用したものである。合わせて、後輪のデフがR180にサイズアップされ、機械式LSDが組み込まれる。また後輪のドライブシャフト径とパーキングブレーキ用ドラム径も拡大されている。
サスペンションは、前方がL型ロアアームのストラット式、後方が2本のラテラルリンク(パラレルリンク)とトレーリングリンクを組み合わせたパラレルリンクストラット式で、初代レガシィと共通である。セダン「WRX」のMT車にはバネ下重量軽減のため、アルミ合金製鍛造フロントロアアームを新たに採用している。
ブレーキは、ベンチレーテッドディスクブレーキが前輪に全車標準装備されており、「WRX」では後輪にもおごられている。また、D年改以降の「STiバージョン」にはフロントに対向4ポットキャリパーと16インチ対応ディスクロータ、E年改以降の「WRX type RA STi」、「WRX type R STi」にはさらにリヤ対向2ポットキャリパーと15インチ対応ディスクロータが採用された。
エンジンは、全グレードに水平対向4気筒「EJ」型を採用している。それを細かく区別すると4種類が存在する。詳細は下記を参照。
なお、同型の生産終了以降、平成24年(2012年)3月28日発売されたBRZに至るまでの間スバルに2ドアクーペはラインナップされなかった。
STIによりチューニングされたEJ20エンジンは、最高出力300PSとなった。また、サスペンションやエクステリアも、STIの技術が注ぎ込まれていた。300台限定で、価格は390万円だった。
販売終了前月までの新車登録台数の累計は27万7910台
ボディデザインは初代を引き継いでセダンとスポーツワゴンが用意されたが、スポーツワゴンが5ナンバー枠に収まるのに対し、セダンはスポーツ走行での安定性を考慮しブリスターフェンダーを備えた3ナンバーサイズとなった。また、スバルブランドがイメージ模索に迷走するあおりを受けて、そのライフスパンの中で大きく2度に及ぶ大幅なフェイスリフトを受けた。スポーツワゴンは一時期、サーブ・9-2Xとして北米市場にOEM供給された。
2代目開発当時、各メーカーで盛んに叫ばれていたいわゆる「衝突安全ボディー」の設計に注力され、「新環状力骨構造」の採用、また前面衝突時の衝撃を効果的に吸収するサブフレームが前端に追加された。「STi」では剛性の確保が根本的に見直され、サイドシルの断面積拡大、ストラットボックス、クロスメンバー部の補強などが行われた。
2.0 Lターボ車は、スバルのターボ車として初めて吸気側に可変バルブタイミング機構(AVCS)を採用した(2 L NAモデルはGC・GF 型で採用済み)。
2.0 Lターボ車に新たにTGV(タンブル・ジェネレーション・バルブ)が採用され、燃焼効率の向上、触媒の二重化による始動直後の排出ガスレベルの低減を実現し、STiを除く全車が平成12年度基準排出ガス25%低減レベル適合(G-LEV)した。また、2.0 Lターボ、2.0 L NAが「良低排出ガス車(☆)」、1.5 Lが「優低排出ガス車(☆☆)」に適合し、「グリーン税制」対象車となっている。
四輪駆動モデルでは5速MTにVCU(ビスカスカップリング)方式LSD搭載ベベルギア方式センターデフを、E-4速ATに「MP-T」を用いたアクティブトルクスプリット4WDを採用している。四輪駆動ターボ用には、5速MTとして従来のTY75型(VCU方式LSD搭載センターデフ)を引き継いでいる。E-4速ATとしてレガシィと共通の、遊星歯車式センターデフ+「MP-T」によるVTD-AWDトランスミッションが搭載された。STiには、今回は全くの新開発のスバル内製「TY85」型6速MTが搭載された。先代ではガラスのミッションと酷評されたが、この代から搭載されたミッションは強度が見直された。
前述の通り2度のフェイスリフトを実施しており、ヘッドランプの形状から順に「丸目」・「涙目」・「鷹目」と呼ばれている。デザイン・マネージャーを務めた石井守によると、デビュー当初「丸目」としたのは会社の意向であり、抵抗を感じつつもポルシェ・911のような格好良さを目指したという。デザイナー側としてはできるだけライトを寝かせたかったが、エンジンルーム内における部品配置スペースの確保(特にバッテリー)や整備性(ランプ球切れ時の交換のし易さ)を求める技術者側の要望を反映した結果、市販モデルはライトが前方に突出かつ直立気味となり、自動車メディアやWRXオーナーから不評を買った。スバル・アルシオーネのデザイナー・碇穹一は、当時は初代インプレッサ開発時代と異なり「モデルを数だけ造って、その中からいいのを選べばよい、という安直な雰囲気があった」(引用)とし、「どのモデルにも迫力がなかった。(略)最有力案といわれるモデルの丸目のライトの設定のどこに走りのイメージがあるというのだろうか」(引用)と嘆いた。続く「涙目」はラリー車両を担当していたイギリス人デザイナーが手直しを行ったもので、男性客の反応は上々であったが、一方で女性客は離れる結果となった。最後の「鷹目」は航空機をモチーフとしたスプレッドウィングスグリルを採用し、シャープかつスポーティに仕上げた。
全国の警察の機動捜査隊に後期型WRXが覆面パトカー(リアウイング・レス仕様)、栃木県警や埼玉県警,広島県警などの高速隊に中期型WRXが白黒パトカーとして配備されている。日本国外でもフランス国家憲兵隊では、高速道路での取り締まりで使用されている(ライバル車のランエボもイギリスなど、欧州の警察で採用されている)。
なお、WRX,WRX STIはスピードメーターの最高が180km/hから260km/h表記になった。
販売終了前月までの新車登録台数の累計は18万3652台。
4ドアセダンと5ドアハッチバックの2モデルとなった。日本では5ドアハッチバックの販売が先行し、4ドアセダンは約1年遅れて市場に投入された(2008年10月8日)。いずれも全幅が1,700 mmを超えるので3ナンバーとなり、全長も拡大しコンパクトからミドルクラスへとクラスアップした。シャシーは、BL/BP系レガシィのプラットホームを基にした「SI-シャシー(Subaru Intelligent Chassis)」を新たに採用し、リアサスペンションの形式が従来のストラット式からダブルウィッシュボーン式へと変更された。ドアもサッシ付ドアに変更された。
エンジンについては、1.5 Lモデル「15S」はEL15型DOHC16バルブ、2.0 Lモデル「20S」はNA仕様がEJ20型SOHC16バルブであり、ツインスクロールターボ仕様「S-GT」がEJ20型DOHC16バルブである。国内向け2.0 Lターボ車のグレード名は「WRX」から「S-GT」となったが、国外モデルのターボ車(全て2.5 L)は先代同様「WRX」のグレード名を使用する。
2007年(平成19年)11月20日、新型インプレッサはアメリカの保険団体の衝突安全テストで最高評価を獲得し、2008年(平成20年)4月21日国土交通省などが、安全性能の評価が最も高い車に与える、2007年度の「自動車アセスメントグランプリ」に選ばれるなど、安全性の高い車種として評価されている。
発売当初からしばらくセダン投入の動きは見られず、富士重工は「日本市場の様子を見てセダンの販売を検討していく」としていたが、同年11月29日、日本国内でもセダンを投入すると報じられた。
当初は2008年(平成20年)初頭の発表が噂されたが、報道から約9か月後の同年10月8日に「インプレッサアネシス」の名で発売が開始された。
アネシスの特徴としてゴルフバッグを4つ積載できるトランクルームを備えるとともに、光輝タイプのヘッドライトや専用フロントグリルにより、ハッチバックとは異なるフロントマスクとなっていることが挙げられる。インテリアは上級モデルにパールスエードと本革を組み合わせている。エンジンは1.5 LNAのEL15型DOHC16バルブと2 L自然吸気のEJ20型SOHC16バルブの2種で、ターボ搭載のS-GTや先代のWRX系は設定されない。また、アネシスと同じくハッチバックにも一部改良が実施され、新フロントグリル、LEDサイドターンランプ付きドアミラー(2 Lのみ)、ブラックトリムと後席中央3点式シートベルト&ヘッドレストを装備する。
2010年6月、インプレッサの一部改良と同時に登場した、クロスオーバーモデル(詳細は別項を参照)。
2007年10月24日に発売された。先代までのセダンボディから、ショートオーバーハングの5ドアハッチバックボディとなった。型式はCBA-GRBである。
エクステリアには、大きく張り出しエッジを効かせた前後フェンダーを採用。これにより、標準インプレッサシリーズとは別の専用ボディとなり、車両型式も専用となった。
インテリアでは、新たにレカロ社製フロントバケットタイプシートをメーカーオプションで設定。本革巻3本スポークステアリング、3連式のレッドルミネセントメーターや、テレスコピックステアリングも採用された。
走行性能面では、SI-DRIVEやマルチモードDCCD、マルチモードVDCなどのメカニズムが新たに採用された。先代に続きツインスクロールターボを採用した新開発のEJ20エンジンは280PSの自動車馬力規制を超え最大出力308PSとなり、同時に低・中回転域のトルクも向上したほか、可変バルブタイミング機構・AVCSが吸気、排気の双方に設けられ、「平成17年排出ガス基準50%低減」を達成した。
2010年(平成22年)7月1日より4ドアモデルが追加され、同時に5ドアモデルについても4ドアモデルと同一のフロントグリルやバンパーなどでフェイスリフトを行いマイナーチェンジ。グレードはともに2.0 Lターボに6MTの組み合わせの「WRX STI(型式 GRB/GVB)」と2.5 Lターボに5ATの組み合わせの「WRX STI A-Line(型式 GRF/GVF)」の2種で、後者にはサンルーフやタン色本皮革シートが選べる「プレミアムパッケージ」を用意。また、この年次改良から、カタログやスバル公式ウェブサイトでの掲載および店頭等での表示車名が「スバル インプレッサ WRX STI」から「スバル WRX STI」に省略変更され、インプレッサシリーズから独立した車種となった(正式車名は「スバル インプレッサ WRX STI」のままである)。なお、標準モデルがフルモデルチェンジした2011年11月30日以降も、本モデルは2014年8月25日にフルモデルチェンジされるまで継続生産・販売された。
4代目はフルモデルチェンジに併せて、5ドアハッチバックタイプは「スポーツ」、4ドアセダンタイプは「G4」にそれぞれサブネームを改めた。
先代とほぼ同等のボディサイズに、ホイールベースを25 mm拡大し、ドア構造を見直したことで室内スペースが広められたことで、ショルダー&エルボースペースや後席足元にゆとりを持たせるとともに、Aピラー下端を200 mm前に出したことで視界確保を両立。インパネの高さを抑え、ドア窓肩部を低くし、フロントドアに三角窓を追加したことで視界や開放感を高めた。トランクスペースは、「G4」ではスペースそのものを拡大するとともに6:4分割式トランクスルー機能を採用し、「スポーツ」ではルーフ後端構造の見直しやパンク修理キットの採用で床面高を下げ、さらにサブトランクを追加した。
エンジンは2010年秋に新世代「BOXERエンジン(水平対向エンジン)」が採用され、1.6 L車はFB16型(1.6 L)を搭載。3代目から100 ccアップした排気量分をトルクアップに使用。先代2.0 L車と遜色ない加速を実現するとともに、1.5 L車と比較して約20%の燃費向上も実現した。2.0 L車はフォレスターに採用のFB20型に置換。従来型に比べ、約27%の燃費向上を実現するとともに、中速領域のトルクも向上したことで、2.5 L車並のアクセルを軽く踏み込むだけでも素早い加速が感じられるレスポンスの良さを実現した。トランスミッションは時代遅れであった4ATから、既にレガシィやエクシーガ等で採用しているチェーン式CVT「リニアトロニック」で、パーツやレイアウトを最適化した改良型を搭載。2.0 L車にはパドルシフト式6速マニュアルモードも備える。さらにリニアトロニック車(「1.6i」を除く)にはアイドリングストップシステムも搭載。飛び込み式スターターにタンデムソレノイドを搭載したことでアイドリングストップが作動してエンジンが完全に止まる前でも再始動を可能にした。1.6 L車の四輪駆動車・5MT車と「1.6i」の前輪駆動車を除く全グレードで「平成22年度燃費基準+25%」を達成した。
ボディに超高張力鋼板を採用し、骨格を見直したことで全方向において高い衝突安全性を実現。さらに、「2.0i」・「2.0i-S」にはレガシィに採用されている「EyeSight(ver.2)」搭載グレードを設定。衝突被害軽減ブレーキを搭載した。この「EyeSight」は2014年11月のマイナーチェンジでレヴォーグから順次導入されている「EyeSight(ver.3)」に更新されている。
2015年6月には、スポーツにスバルのハイブリッド車としてはXV HYBRID以来2車種目となる「SPORT HYBRID」を発表した。シンメトリカル四輪駆動車の構造をベースに、モーターアシストによる加速性能と低燃費を両立した独自のAWDハイブリッドシステムを採用。ハイブリッドシステム用バッテリーは制御変更を行うことで回生頻度を向上させ、積極的にバッテリーを使用することで燃費向上を図り、トランスミッションは既存のリニアトロニックにハイブリッド用の駆動モーターを一体化した専用品を採用することでフリクションを低減し、トルクコンバーターの流体特性を変更することで「平成32年度燃費基準+10%」を達成。一方でインバーターやDCコンバーターなどの高電圧部品とバッテリーをワンユニット化してラゲッジルーム下に収めることで荷室はフラットとした。併せて、フリクションを抑えて初期応答性を高めたダンパーの採用や足回りセッティングを最適化、タイヤはガソリン車の205/50R17から幅広の215/50R17に変更され、遮音材や吸音材の最適部位への設定・強化や専用の液体封入エンジンマウント採用により振動や騒音を低減した。EyeSightはver.2が採用されているが、全車速追従機能付クルーズコントロール作動時にEV走行と回生ブレーキを最大限活用することで実用燃費の向上を図るECOクルーズコントロールを備えた。また、HYBRID専用装備として、フロントやサイドシルスポイラーに専用品を採用。ルーフエンドスポイラーとリアコンビランプはLEDを採用。内装にはブルー加飾のアクセントが加えられた。
また、3代目にラインナップされていた派生モデルのXVは2012年9月25日に、WRX STIはボディタイプを4ドアセダンのみに集約の上2014年8月25日に、順次モデルチェンジされたが、車種名を「XV」及び「WRX STI」に改め、「インプレッサ」シリーズから独立した車種となった。詳細はスバル・XV及びスバル・WRX VAをそれぞれ参照。
なお、G4には桐生工業が手掛けた教習車仕様が存在する。
5代目は新世代プラットフォームである「SUBARU GLOBAL PLATFORM」を初めて採用。これにより操舵応答性と操舵安定性が飛躍的に向上するとともに、衝突時のエネルギー吸収量を先代モデルの1.4倍としたことで乗員保護性能を高め、ボディ構造の最適化と高張力鋼板の適切配置により重量の増加を抑えながら全方位(前面・後面・側面)においての衝突安全性も向上した。併せて、ボディはフレームワークの一新、プラットフォームと上屋骨格の結合強化、リアフレームとサイドシルの結合構造の見直し、構造用接着剤などを行い、サスペンションはフロントにおいてクロスメンバーの構造を変更し、リアにおいてはサブフレームブッシュの形状変更を行ったことでボディやサスペンションの剛性を大幅に向上。温度空間の均一化と静粛性の向上を実現するため空調ユニットにヒーターブロアユニット一体型を採用した。キャビンスペースも拡大され、ステアリングのチルト・テレスコストロークを拡大したほか、フロントシートの構造も刷新している。
ボディサイズは、「インプレッサSPORT」、「インプレッサG4」ともに、先代モデルに対して全長は+40 mm、全幅は+35 mm、ホイールベースは+15 mmとそれぞれ拡大。また、全高は「インプレッサSPORT」が+15 mm、「インプレッサG4」は-10 mmとなった。なお、最小回転半径は先代と同様、5.3 mを維持している。
安全性能では、日本車で初採用となる「歩行者保護エアバッグ」を全車に標準装備。バンパー内部の圧力センサーにより歩行者との衝突事故を検知し、瞬時にフロントガラスとAピラーの下端をエアバッグで覆うことで、歩行者の頭部へのダメージ軽減を図る装備である。
また、先代モデルでは一部グレードにメーカー装着オプションとしていたSRSサイドエアバッグ+SRSカーテンエアバッグに加え、前面衝突時にドライバーの下肢へのダメージ軽減を図るた運転席SRSニーエアバッグを初採用。デュアルSRSエアバッグと合わせ、合計7つの乗員保護用エアバッグを標準装備とした。
運転支援システムEyeSight(ver.3)は、前輪駆動車にも拡大展開し全車標準装備とした。新たに「車線中央維持機能」を採用するとともに、ACC(全車速追従機能付クルーズコントロール)の機能強化を実施している。
また、自車の後側方から接近する車両を検知し、ドライバーに注意を促すことで安全運転をサポートする「スバルリヤビークルディテクション」(後側方警戒支援システム)、ステレオカメラで先行車や対向車などの灯火を検知して、ハイビームとロービームを自動で切り替える「ハイビームアシスト」を新採用。これらは「アドバンスドセイフティパッケージ」として、全グレードにメーカー装着オプションとした。
そのほか、コーナーや交差点で、ステアリング操作に合わせてヘッドランプ光軸を左右に動かす「ステアリング連動ヘッドランプ」(2.0i-S EyeSightに標準装備、その他のグレードにメーカー装着オプション)、コーナリング時でのライントレース性を向上する「アクティブ・トルク・ベクタリング」(2.0i-S EyeSightに標準装備)も新採用した。
エンジンは先代モデルから継続搭載となる、水平対向4気筒1.6 Lの「FB16」型と、同2.0 Lの「FB20」型を採用。
2.0 Lエンジンの「FB20」型は燃料システムを直噴化し、約80%の部品の設計を見直すとともに、先代比約12 kgの軽量化を実現したことで、燃費と実用域トルク両方の向上を実現。また、エンジン本体の高剛性化と固定点の追加によって振動騒音を低減した。最高出力は、+3kW(4PS)向上し、113kW(154PS)を発生。なお、最大トルクの数値は196 N・m(20.0 kgf・m)で、先代からの変更はない。
1.6 Lエンジンの「FB16」型は出力性能を維持したままで環境性能の向上、振動騒音の低減、大幅な軽量化を行い、静粛性と操縦安定性、燃費向上を実現している。最高出力、最大トルクの数値は先代と同一の数値だが、それぞれの発生回転数の数値が異なっている。
トランスミッションは、先代モデルの1.6 L・四輪駆動車に設定されていた5MTを廃止し、全グレードがリニアトロニックのみの設定となった。構造は全面的に改良され、チェーンのさらなるショートピッチ化とレシオカバレッジ(変速範囲)の拡大(6.28 → 7.03)によって発進加速性能と高速巡航時の燃費を向上させた。さらに、トルクコンバーターの小型化とケースの肉厚最適化により、先代モデル比約7.8 kgの軽量化を実現した。また、マニュアルモードは先代の6速から、7速に多段化している。
デザインにおいては新デザインフィロソフィーである「DYNAMIC × SOLID」をスバルの量産モデルで初めて全面採用。
「インプレッサSPORT」はサイドのフロントガラスを傾斜させるとともにルーフ後端を下げ、ウィンドウのショルダーラインとドア下部のキャラクターラインに加えて、前後のフェンダーから流れる「ダイナミックブレード」と呼ばれる新たなキャラクターラインを採用。リアはリアコンビランプを左右に大きく張り出し、大型ルーフスポイラーや翼端板の採用、リアバンパーをフィン形状にすることで空力性能も高めた。
一方、「インプレッサG4」は、クーペの様な流麗なルーフラインとハイ&ショートデッキの組み合わせ優れた空力性能とスポーティさを備えたセダンフォルムを実現。リヤスタイルは、キックアップしたトランクリッドやリヤバンパーによるシャープなシルエットにより、スポーティセダンらしいデザインとした。
インテリアでは、インパネにステッチを施し、加飾パネルをはじめ、コンビメーターやステアリング、シフトノブ、ベルトリングなどの重要なパーツの周囲を金属調のパーツで囲う「ケーシングモチーフ」を採用した。
なお、本モデルより、北米仕様は北米スバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)で現地生産されることとなった。(詳細は、下記年表「2016年11月2日」を参照。)
本車はラリー、各種オンロード競技など様々なレースシーンで用いられる車種の一つである。初代は「ガラスのミッション」とさえ呼ばれるほどそのパワーに対してトランスミッションの許容値が低く破損しやすいことが挙げられ、後のモデルのミッションを流用するなどして大容量化を図るケースもあった。
インプレッサは初代から一貫してモータースポーツ、特にラリー競技と切り離せない関係にある。世界ラリー選手権(WRC)ではシトロエンやプジョーと互角の闘いを繰り広げ、国内イベントでも常にチャンピオン争いに絡む活躍を見せてきた。2.0 Lクラスのラリー競技用車両としては、日本はもちろん世界的にも三菱自動車工業のランサー・エボリューションと並び称され、特に近年までのグループNクラスはほぼこの2車種が独占していたなど、スバルの世界的なブランド・イメージの構築に大きく貢献した。
また競技本番用としてだけでなく、ラリーステージの下見(レッキ)を行う際の車として、高性能な四輪駆動市販車を持たないメーカーのチームでも使用されることがある。
世界ラリー選手権(WRC)ではこれまでマニュファクチュアラーズチャンピオン3回(1995年、1996年、1997年)、ドライバーズチャンピオン3回(1995年、2001年、2003年)を獲得している。
2008年(平成20年)12月16日、スバルは世界的不景気の影響と3年以上勝利が遠ざかっていたこともあり、当初の目的はおおむね達成したとの判断から、2008年末で卒業するとしてWRC参戦の終了を発表し、これに伴ってワークスインプレッサのWRC参戦は終了した。
ホモロゲーション名は「インプレッサ555」。
WRC(世界ラリー選手権)には、1993年シーズン終盤の第9戦「1000湖ラリー」からレガシィに代わって投入され、アリ・バタネンのドライブにより初参戦にして2位という鮮烈なデビューを飾った。1994年には1990・1992年チャンピオンのカルロス・サインツがトヨタから移籍。その繊細なセッティング能力によって戦闘力が向上、第6戦「アクロポリス・ラリー」で初優勝を果たし、マクレーの手による2勝と併せてマニュファクチャラーズポイントでも2位を獲得した。1995年には8戦中5勝を挙げて、スバルは本格参戦から6年目にして、マニュファクチャラーズ及びドライバーズ(C.マクレー)のダブルタイトルに輝いた。続く1996年もドライバーズタイトルこそ三菱のトミ・マキネンに奪われるものの、マニュファクチャラーズタイトルを2年連続で獲得。グループA最強のラリーマシンとして認知され、欧州におけるスバルのブランディング向上とインプレッサの販売および日本におけるラリー人気の拡大に大きく貢献した。
グループA規定が緩和されたワールドラリーカーの導入にあたってスバルは2ドアのリトナをベース車に選択。1997年にもドライバーのポイントの積み重ねでマニュファクチャラーズタイトルを獲得。日本メーカーでは唯一の3年連続のマニュファクチャラーズタイトルを達成した。だが1998・1999年は三菱や復帰してきたトヨタの後塵を拝し、さらにプジョー・シトロエンの参戦もあってタイトルからは遠のいてしまう。2000年には2代目インプレッサへの移行を見越した大々的な改修が施された。
2001年にはリチャード・バーンズが、2003年にはペター・ソルベルグが、それぞれWRCドライバーズタイトルを獲得。2004年初開催となったラリージャパンではペター・ソルベルグが記念すべき初代勝者に輝いた。さらに、2005年にはプロダクションカーWRC(PCWRC)で新井敏弘がシーズン・チャンピオンを獲得した。しかし、ライバルチームの戦闘力向上に追いつかなくなった2006年、2007年に、スバルは屈辱的な年間未勝利に終わった。
フルモデルチェンジに伴い、リアオーバーハングが短くホイールベースが長いハッチバックボディになったため、ようやくシトロエン、フォードなどのライバルと同等のボディ・次元で戦えるようになった。
しかし、タバコスポンサーの撤退に伴い資金が豊富なシトロエンやフォードに比べテストが不足、開発・オペレーションを担当していたプロドライブにおける度重なるトップエンジニアの更迭・引き抜き・解雇などに端を発する開発現場の混乱も手伝い、マシンの開発や熟成に時間がかかるといった問題が新型へスイッチされてもなお、改善されなかった。またWRカーのレギュレーションはエンジンの搭載位置および搭載角度は規定内で変更可能であり、横置き直列エンジンならエンジンを後傾させてマシン中央部に寄せるなど、重心を大幅に改善する設計が可能だが、水平対向エンジンを縦置きにレイアウトするインプレッサにはほとんど改造の余地がなく、グループA・Nでは絶大だったロードカーとしての素性の良さを生かせないWRカー規定自体がインプレッサにとっては不利であった。
2008年(平成13年)12月16日に、同年をもってWRCから撤退することが正式に発表され、1993年の1000湖ラリー(ラリーフィンランド)以降14年にわたって維持されてきたインプレッサによるワークス・エントリーの歴史に終止符が打たれた。同一車名による14年間連続ワークス・フルエントリーは、WRC史上最長記録となっている。
世界ラリー選手権(WRC)以外のラリー競技では、で""のケン・ブロックとトラビス・パストラーナらが活躍し、ライバルを圧倒し続けた。
インプレッサはラリー以外の分野でも活躍している。
全日本ツーリングカー選手権(JTCC)には、1996年と1998年にSYMSレーシングから初代スポーツワゴンで出場していた。レギュレーション上、駆動方式の変更が認められていたためFRとし、同一メーカー製造のエンジンであれば換装可能であったので、EJ18をボアアップし、EJ20のDOHCシリンダーヘッドとドッキングさせた、2.0 L NA DOHCエンジンが搭載された。
SUPER GT(旧:JGTC)には、クスコ・レーシング(キャロッセ)が1997年の最終戦より初代2ドアクーペで出場し、2002年より2代目4ドア車が特認車両として出場していた。当初は、四輪駆動車には最低車重が上乗せされるレギュレーションであったため、四輪駆動によるトラクションより車重を抑える方が得策との判断からFRが選択されていた。その後、駆動方式による最低重量区別がなくなった2006年の途中から四輪駆動仕様が参戦している。また、インプレッサの活躍もあってか2008年(平成13年)より4ドア車も認められ、同年第4戦 マレーシアにおいて、4ドアそして四輪駆動車として初優勝を飾った。しかし、2009年はチームが活動を縮小したため、参戦していない。
スーパー耐久では2002年と2005年、2013年から2016年は四連覇でST2クラス(旧クラス2)のシリーズチャンピオンを獲得している。
ニュルブルクリンク24時間レースではWRX STIが2011年にSP3Tクラスでクラス優勝(総合21位)し、翌2012年にも同クラスでクラス優勝(総合28位)している。
D1グランプリにチームオレンジのマシンとして初代、2代目(涙目、涙目改鷹目GDB)が使用されていた。スバルの水平対向4WDは縦置き故にセンターデフの小加工でFRにでき、比較的早く四輪駆動改後輪駆動仕様が製作された。無論、後輪に全出力が集中するため、後軸周りを中心とした駆動系の強化は必須となる。
2017年にTOYOTA GAZOO RACINGが公開したCMでは、トヨタの豊田章男社長が佐藤健をインプレッサの助手席に乗せてドリフトをして見せ、車メーカーの枠にこだわらない車好きをアピールした。
インプレッサの名称、IMPREZAとは、「紋章」「金言」などの意を持つ英語""IMPRESA""からの造語である。
ハイパワーモデルの呼称であるWRXとはWRCの「WR」とレオーネのスポーツグレードで採用されていた呼称「RX」を掛け合わせた造語である。
ちなみに3代目セダンのサブネームであるアネシス("ANESIS" )とはギリシャ語で「安心」「リラクゼーション」を意味し、4代目以降のセダンのサブネーム「G4」の「G」は英語で「本物の、正真正銘の」を意味する「Genuine」の頭文字と「4」は4ドアを意味する。
また、クロスオーバーモデルのXVはCrossover(=X-over) Vehicleを意味する。