レクサス・LC
LC(エルシー、Lexus LC)は、トヨタ自動車が展開する高級車ブランドレクサスが販売するラグジュアリー2ドアクーペである。
レクサス初のFセグメントのクーペモデルであり、2012年にデトロイトモーターショーで発表したコンセプトカー「LF-LC」の革新的なデザインイメージをモチーフに、新開発プラットフォームによる骨格を活かして開発が行われた。
「LC500」とハイブリッドシステムを搭載する「LC500h」の2種が用意され、今後のレクサスのFR車に展開される「GA-L(Global Architecture-Luxury)プラットフォーム」を初採用した。
LC500にはRC FやGS Fにも搭載される2UR-GSE型エンジンを搭載。最高出力/最大トルクは、351kW(477PS)/540N・m(55.1kgf・m)を発生し、最大トルクはRC FおよびGS F比で10N・m(1.1kgf・m)向上している。また、トランスミッションは新開発の10速オートマチックトランスミッションの「Direct Shift-10AT」を組み合わせている。
LC500hは新型の8GR-FXS型エンジンを核とした「マルチステージハイブリッドシステム (MULTI STAGE HYBRID)」を搭載し、システム最高出力は264kW(359PS)。マルチステージハイブリッドシステムは、既存のハイブリッドシステムに有段ギヤを組み合わせた世界初の機構となり、2つのモーターを使用した電気式無段変速機と4段ギアの自動変速機構(ステップAT)を組み合わせることで、無段階変速機構からの出力自体を変速、パワフルな走りと燃費の良さを両立させている。さらに、無段変速機構による有段変速制御と4段変速を組み合わせる事で擬似的な10段変速を実現した。これにより従来のTHS-IIにおいてエンジンの回転数と加速が同調しないラバーバンドフィールの問題を解決し、ハイブリッドシステムでありながらダイレクトなスポーティードライブを実現している。また、バッテリーはレクサスブランドとしては初採用となるリチウムイオン二次電池を搭載。それに伴い、「HYBRID」エンブレムも通常のものではなく「MULTI STAGE HYBRID」タイプに変更されている。そのマルチステージハイブリッドについては、「ドリフトができるようにしたい」という思想から開発がスタートしている。
開発責任者の佐藤恒治は、コンセプトのLF-LCを見たときサスペンションもエンジンも入るスペースのないほど低いシャシーを見て「市販車として実際に走らせるのは到底不可能と思った」という。しかし半年前に米国でGSを発表したとき否定的な意見が多かったのに対して、LF-LCは「このデザインは今後のレクサスが進むべき方向を示している」「レクサスはこういうクルマをつくれるブランドであって欲しい」と非常に評価が高かったことから開発が決まり、最終的にコンセプトに近いデザインで販売できた。
2016年北米アイズ・オン・デザイン・アワードのベストデザイン賞・ベストプロダクションカー賞を受賞している。
特徴あるデザインは、トヨタが米国カリフォルニア州に置くデザインスタジオ・CALTYによる。全長は4,770mm、ホイールベースは2,870mm。フロントオーバーハングとリアオーバーハングはかなり短く、フロントは920mm、リアは970mm。レクサスのデザインアイコンとなった巨大なスピンドルグリルをはじめ、砂時計状の形状が反復して表現されており、平面視でもフロントフェンダーとリアフェンダーが飛び出し、ドアパネルが内側に引き込まれているように見える。
フロントフェンダーからのラインは、ピラーを黒く塗った屋根の境界をも形成する。レクサスは、Cピラーモールディングの鋭いエッジのインスピレーションとして “伝統的な日本刀”を挙げている。スピンドルシェイプはリア中央のデザインにもはっきりと見ることができ、他のすべての要素もどこかで一度深く絞り込まれている。なお、LCはレクサスブランドとして初めてリヤに「LEXUS」のロゴエンブレムが付かない車種である。
コックピットはドライバーとクルマの一体感を醸成するドライビングポジションとし、ペダル配置、ステアリング傾角、シートのホールド性など、徹底した走り込みに基づく細部にこだわったレイアウトを取った。シフトバイワイヤシステムや、直感的な操作に対応した次世代マルチメディアを操作系に採用。ステアリングホイールは、握る位置に合わせて断面形状を緻密に変化させ、手にしっくりと馴染むよう配慮。パドルシフトにはマグネシウム素材を使用し、操作性と質感が相まって、ドライビングプレジャーの高まりを演出した。助手席は、人を包み込みながら、車両前方へ視覚的に広がりを感じさせる開放的な空間づくりを目指した。
レザーやアルカンターラを採用し、触って感じる素材感や使うたびに深まる心地良さは、レクサス独自の感性とクラフトマンシップによる繊細で高品質なモノづくりで実現。メーターは、IS及びRCの「F SPORT」グレードで採用されている可動式マルチインフォメーションディスプレイを全車に採用した。また、ボディ骨格から考慮し開発されたオーディオシステムの採用など、上質なおもてなしの空間を提供している。
「Lexus Safety System +」を採用。ミリ波レーダーとカメラを用いて前方の車両や歩行者を検出し、警報、ブレーキアシスト、自動ブレーキで衝突回避支援および被害軽減を図るプリクラッシュセーフティシステム(歩行者検知機能付衝突回避支援タイプ)、車線維持をサポートするレーンキーピングアシスト、夜間歩行者の早期発見に寄与しロー・ハイビームを自動で切り替えるオートマチックハイビーム、そして先行車との車間距離を保ちながら追従走行するレーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)、これら4つの先進安全技術をパッケージ化し、多面的な安全運転支援を強化している。更に、エンジンフードを4つの支点でポップアップさせる4点式ポップアップフードをレクサスブランドで初採用している。
2017年(平成29年)より、従来のRC Fに代わってSUPER GT・GT500クラスに参戦する。SUPER GTのレギュレーションにより、エンジンはスーパーフォーミュラと共通の2リッター直列4気筒直噴ターボのトヨタ・RI4Aを搭載する。
「プライベーターチームの意見をよく聞きながら開発した」というこのマシンは圧倒的な戦闘力を発揮し、デビュー戦岡山でレクサスチーム全車が上位(1-2-3-4-5-6)を占めるという歴史的完勝を記録した。その後は5勝を挙げるもLC同士でポイントを食い合った結果MOTUL AUTECH GT-Rに一時首位を許すが、最終的にはKeePer TOM'S LC500がチャンピオンを獲得した。なおこのチャンピオンは「開幕戦で表彰台に登ったチームはチャンピオンになれない」というジンクスを打ち破ってのもので、なおかつドライバーの二人とも史上最年少の23歳という記録も打ち立てた。
2018年はKeePerがディフェンディングチャンピオンとしてレイブリックNSXとタイトルを争い、最終戦では両者一騎打ちで前に出たほうがチャンピオンという史上稀に見るドッグファイトとなったが、オーバーテイク叶わず惜敗した。
2020年規定の参戦車にトヨタ・GRスープラが発表されたことにより、LC500そしてレクサスブランドとしてのGT500最終年となった2019年は、開幕戦岡山こそ他陣営に遅れをとったが、その後シーズン内の連勝記録としてはトップタイになる5連勝を成し遂げた。最終戦もてぎはKeePer対TEAM LEMANS WAKO'sのレクサス同士の一騎打ちとなり、KeePerが同年レクサス6勝目となる優勝を飾ってWAKO'sが2位に入り、Wako'sがドライバーズチャンピオンを、KeePerがチームチャンピオンを分け合った。これによりLC500は17年規定下において勝率・総獲得ポイント数がトップの最強マシンとしてその役割を終えた。
なお2019年は初開催となったDTM(ドイツツーリングカー選手権)との特別交流戦にも参戦し、レース1でKeeperのニック・キャシディがポールトゥウィンを飾っている。
TOYOTA GAZOO Racingは2018年(平成30年)、レクサス・Fのロゴの書かれた市販車テスト用のLC500で、技術開発と人材育成を名目にニュルブルクリンク24時間レースのプロトタイプ車クラスであるSP-PROクラスに参戦。ドライバーは土屋武士/松井孝允/蒲生尚弥/中山雄一。序盤に接触で足回りにダメージを負った他、ギアボックスにトラブルも生じて一時ガレージに収容されたが、修復して総合98位で完走した。
2019年もドライバーとクラスをそのまま、GRスープラとともにニュルに再挑戦。予選では35位を獲得したが、決勝ではトランスミッションオイルが漏れるトラブルで、大事を取って載せ替えるために2時間のピットインを強いられた。その後は大きなトラブルなく、総合54位で完走した。
2020年はエンジンをV8ツインターボに変更して参戦を続ける。
2018年3月1日に日本公開のマーベル・スタジオ製作『ブラックパンサー』とコラボレーションを行い劇中にも登場した。
「LC」の車名は 「Luxury Coupe」の頭文字をとった略であるとともに「Lexus Challenge」という意味が込められている。