ホンダ・アコード
アコード(Accord)は、本田技研工業が生産・販売している中型高級乗用車である。かつてはミドルクラスに位置していたが、シビックのミドルクラスへの移行とインスパイアの生産終了に伴い、アッパーミドルクラスへと移行している。
1985年にレジェンドが発売される以前と、2012年のレジェンド生産終了から新型モデルが国内導入される2015年1月までは同社のフラッグシップモデルであった。
初登場時の形態は1.6Lエンジンを搭載した中型の3ドアハッチバック車であり、同社のシビックから、より上位の車種への買い替えを求める層の受け皿として開発された。開発責任者(LPL)はシビックも手がけた木澤博司が担当した。
開発は「654計画」と呼ばれ、先に中止されていた、2.0 L 直列6気筒 CVCCエンジン縦置き前輪駆動(FF)方式のアッパーミドルカー「653計画」の開発スタッフが加わっている。
初代アコードは、約90ヵ国に輸出された。
1982年に、日本車として初めてアメリカ、オハイオ州メアリーズビル工場で生産されることになった。アメリカでは非常に高い人気を誇る。
なお北米仕様はヘッドライトが初代ビガーと同じく、SAE規格の角型4灯となっている。
型式は以下のとおり
発売後、旧ホンダ店がクリオ店とプリモ店に分割され、のちにアコードはクリオ店専売車種となるが(プリモ店向けの後継車両はアスコット)、このモデルまでは経過措置としてプリモ店でも併売されていた(「CA」はクリオ店専売車種)。逆に、のちにプリモ店専売車種となるシビックも同じ理由で1987年まではプリモ店とクリオ店の併売だった。
当時提携関係にあった英国ローバーグループとの共同開発によって、欧州専用の4ドアセダンを販売した。ローバー・600は姉妹車にあたる。日本国内や北米向けがCD型に置き換わった後でも、欧州仕様は1997年まで小改良を行いそのまま生産していた。1992年にはこのモデルをハードトップ(サッシュレスドア)に変更し、アスコットイノーバとして日本で発売。生産も日本国内で行われた。
また、1995年からはこのモデルをベースとして、ホンダUKがイギリスツーリングカー選手権(BTCC)へ参戦。ボルボやルノー、ボクスホールなどを相手に序盤は低迷したものの、熟成が進むにつれ成績も向上し、全日本ツーリングカー選手権(JTCC)仕様のエンジンを得た1997年には初優勝を飾っている。
EG型シビックフェリオに替わり、1996年から1997年まで全日本ツーリングカー選手権(JTCC)に参戦。2年の間に通称「1X」、「2X」、「2.5X」、「3X」と呼ばれる4タイプの車両を投入した。外装はフロントスポイラーが童夢、リアウィングはムーンクラフトと競作による空力パーツを装着。エンジンはH22A型を2.0Lに排気量ダウンし、吸排気効率を高めるため前方吸気、後方排気のリバースヘッドに変更され、最高出力は310ps/8,500rpmを超える。1996年は服部尚貴(ムーンクラフト)が、1997年にはさらに前後ワイドトレッド化したマシン(3X)で中子修(無限)がそれぞれドライバーズチャンピオンを獲得した。また1997年はTEAM無限HONDAがチームタイトルを獲得している。
アメリカでは乗用車の年間売上のトップ争いの常連であるため、北米仕様はキープコンセプトながらも更なる大型化がされ、当初からV6エンジンを搭載するモデルも用意された。また中国、韓国、東南アジア、オセアニア市場にも北米仕様をベースにした車種が投入されており、世界的にみればこちらがメインともいえる。ボディタイプはセダンとクーペの2種類となり、北米市場で需要が縮小していたワゴンはラインアップから落とされた。
4気筒モデルは、カリフォルニアのULEV基準を世界で最初に満たした市販車である。
ボディタイプはセダンと5ドアハッチバックの2種類となり、車体寸法は日本仕様と比較して全幅が広く、全長が短い。生産は英国のスウィンドンの工場で行われた。エンジンは1.8L、2.0L、2.2Lと2.3L。モデル途中で日本からプレリュードタイプS用の2.2Lエンジンを輸入して搭載した「タイプR」と、アコードワゴン用の2.3Lエンジンを搭載した高級志向の「タイプV」がラインアップに加わった。先代と同様にBTCCに参戦した。
今回のモデルチェンジでは、スタイルは先代を継承したが、ボディを大幅に拡幅して肩やひじ周辺にゆとりを持たせ、フロントセンターアームの採用など先代を超える快適さを目指した。ドライブポジションは操作性と調整自由度を広げ、シートはホールド性とステアリング操作を考慮した形状となる。
専用の片側スポット溶接設備・工程を導入し、ルーフとピラーとの結合効率を向上させボディを剛性と静粛性を向上した。シャシーは低重心化を図り、高い運動性能と乗り心地の両立を図る。フロントピラーは4代目オデッセイと同様の構造を採用し、太さを18%スリムにすることにより視界の向上を図った。全幅はグレードによってはインスパイアやレジェンドより広くなる。
安全面では、サイドカーテンエアバッグなど6つのエアバッグや、VSAと協調し車両の挙動を安定させるモーションアダプティブEPSを全グレードに標準装備している。併せて自己保護性能と相手車両への攻撃性低減、歩行者傷害軽減性能を従来より向上させたボディを採用した。
先代と同様に、高速道路での運転負荷を軽減するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC、先代のIHCC)をオプション設定し、LKASを一部グレードに標準装備した。
もともとは、2010年中に展開が予定されていた日本向けアキュラブランドへの移行準備のため、8代目北米仕様アコードを日本でもアコードとして発売する予定だったが、アキュラブランドの日本展開が白紙撤回され、インスパイア、アコードともそれぞれフルモデルチェンジを受けた。
エンジンは、K24A型とR20A型の他に2.2L 直4 ディーゼルのN22B型がラインナップされる。
2009年1月に、ディーゼルエンジンと5速ATを組み合わせたモデルが追加された。この5速ATは、ディーゼルエンジン用にホンダが独自に開発し、初めて採用したものである。
2009年ジュネーブモーターショーにてType Sが発表された。
エンジンはN22B型ディーゼルの高出力版で、ターボチャージャーやシリンダーヘッドの改良、インタークーラーの大型化により、最高出力は150PSから180PS、最大トルクは350N·mから380N·mに向上している。トランスミッションは6速MT。外観では専用18インチアルミホイール、ウインカーのクリアレンズ化が識別ポイントとなる。
2012年の北米国際オートショーでプロトタイプ2013モデルとしてセダン、クーペともに発表され、その後9月19日にセダンが、翌10月15日にクーペがアメリカ国内で発売を開始された。追って、カナダや韓国、ロシア、オーストラリアなどの各市場でも2012年から2013年にかけて順次発売されている。なお、中華人民共和国では2013年9月12日に広汽本田汽車が9代目アコードを発売開始したが、中国仕様車については大型化された独自のフロントグリルを備えている。
ボディサイズは先代よりややコンパクトになっており、軽量化や運動性能の向上に寄与している。室内容量は先代よりわずかに小さくなったものの、ヘッドルームやショルーダールームはほぼ同サイズで、リアレッグルームやトランク容量は大きく拡大した。フロントサブフレームは、アルミニウムとスチールのハイブリッド構造でホンダ独自の摩擦攪拌接合により連続接合している。新世代のACE(Advanced Compatibility Engineering)衝突安全ボディを採用し、高張力鋼板の使用率もアップしている。
今回のモデルでは、エンジンはセダン、クーペともに直4 2.4LとV6 3.5Lという2本立てこそ変わらないものの、「EARTH DREAMS TECHNOLOGY」と称する技術を導入し改良された。直4はK24W型直噴エンジンに一新して環境性能を大幅に上げるとともに、最高出力も185hpとしており、トルクも全域で大幅に向上した。バルブ挟み角は51度から35度に変更されたことにより燃焼室がコンパクトとなった。また、圧縮比は10.5から11.1と高圧縮比化された。
エンジン重量も先代より3.5%の軽量化を果たしている。スポーツセダンモデルではハイフローエギゾーストの採用により最高出力が189hpと4hp向上している。一方、V6基本こそ変わらないものの、吸排気ポートやi-VTECの改良により最高出力を278hpにまで引き上げている。6速ATモデルで採用されるVCMは、先代の6-4-3気筒の3段階からリアバンクの3気筒を休止する2段階となったものの、i-VTECによる低速、高速域での吸気バルブタイミング・リフト量切り替え機能が加わっており(リアバンクは休止含め3ステージ)、実用域のトルクが大幅向上した。その結果3気筒での動作域の拡大が可能となり燃費アップにつながっている。i-VTECの切り替えタイミングは5,150rpmとなっている(VCM非搭載の6速MTモデルは4,900rpm)。3気筒での動作域の拡大に伴う振動に対応するため、28V駆動の新型ACM(アクティブコントロールエンジンマウント)を採用している。これらに組み合わせられるトランスミッションは、セダン/クーペのEX-LとセダンのV6モデル以外では6速MTが標準となっており、4気筒モデルでは先代の5速MTからよりコンパクトな6速MTに変更された。オプションでアコード初となるCVTが直4に、6速ATがV6に用意され、ともにパドルシフトが備わる(先述のグレードには標準装備)。なお、2013年には追ってプラグインハイブリッド仕様も追加される。
最上位のツーリングセダンモデルでは、ホンダ初のLEDプロジェクターヘッドライトが採用され、V6モデルにはLEDのデイタイムランニングライト(DRL)が採用されている。
安全装備については、今回新たに設定されたものとして、LaneWatchブラインドスポットモニターが挙げられる。
これは、ドアミラーに内蔵されたカメラを使って、車外の死角となる部分を室内のモニターに映し出し、LEDで知らせることで、危険を減らそうというものである。同時に、車線をはみ出した時にアラームで知らせる車線逸脱防止システムも装備する。
フロントデザインは大幅に見直されインラインタイプのフルLEDヘッドライト及びLEDフォグライトが採用された。そのイメージは車両グレードに見合った高級かつ精巧なものになった。ホイールサイズはEXグレードで18インチが採用された。特筆すべき点はボディ剛性強化、振幅反応ダンパー採用、防音仕様の見直しによる乗り心地(NVH)面で大幅な改善が図られた点。改善効果は大きく、クラスに見合ったNVHを得た。安全面でも改善されホンダセンシングが標準装備化。特にACCは全車速度追従方式へ改善され、インパネ上部のセンターディスプレイに左後方を広く映すLane Watch機能が追加。これは車両の左後方の映像をドアミラーに内蔵したカメラによりドライバーへ視覚的に映像情報を伝える安全装備である(業界初)。
ナビ配置は上段から下段へ移され、新たにApple CarPlayやAndroid Autoの機能が付加され車両のネット接続がより促進された。シフトノブによるシフトワークは後期型から消失した。これはアコード初の変更ではなく、新型レジェンド (2015-)で採用されたエレクトリックギアセレクターを適用したためである。新型NSX(2016/08-)にも採用された。この流れは車両の電動化を象徴する変化である。実際、アコードのパワートレインの主役はモーターであり、トルコン及びミッション等のトルク伝達機構は存在しないためPHVに近いと言える。エンジンとモーターの仕様も一部改善され、燃費も改善されている。トランクスペースはHV用のバッテリーが小型化し、よりスペースが確保された。今回のマイナーチェンジではエクステリアと機能や性能面が大きく進化し、結果的にフルモデルチェンジと変わらない程の変化が生じている。
現地時間の2017年7月14日に、北米で秋の発売が予定されている10代目アコードを発表した。外観は9代目よりも幅広く・低くしたワイド&ローとなり、フロントオーバーハングを短縮し、ボンネットは長く低くした。内装はホイールベースの拡大により後席足元スペースを拡大したほか、フロントピラーをスリム化。メーターは7インチTFT液晶となり、上級グレードには6インチのヘッドアップディスプレイ、ワイヤレス携帯端末充電器、NFC(近距離無線通信規格)、車内4G LTE Wi-Fiも搭載される。
パワートレインは1.5Lと2.0Lの直噴ターボエンジンが用意され、トランスミッションは1.5L車がCVT、2.0L車には10速ATがそれぞれ備わり、Sportグレードには6速MTが設定される。ハイブリッド車には「」が搭載され、インテリジェント・パワー・ユニット(IPU)をコンパクト化して後席フロア下に搭載したことで、ガソリン車と同等のトランクスペースと6:4の後席分割可倒を可能にした。安全面では安全運転支援システム「Honda SENSING」が全グレードに標準装備される。
ボディ構造においては、「次世代ACE(Advanced Compatibility Engineering)ボディー」の採用や、超高張力鋼板・高機能接着剤の適応拡大を行い、シャシーには可変ギアレシオ付きデュアルピニオンEPSとアコードでは初採用となるアダプティブダンパーシステムを採用。2.0L車には「Sport」と「Normal」の2種類の走行モードを備えた「Two-Mode Driving System」も採用。上級グレードやスポーツグレードには、19インチタイヤを装備した。
2017年10月18日、アメリカで販売開始。
2017年10月27日、カナダで販売開始。
2018年4月16日、中国仕様車(広汽本田汽車製)を販売開始。追って、同年10月25日、東風本田汽車製造の兄弟車が「インスパイア」の名で発表・販売を開始した。
2019年8月2日、日本仕様車が2020年初めにフルモデルチェンジされることになり、関連情報をホームページ上に先行公開したことが発表された。
2019年10月23日、「第46回東京モーターショー2019」にジャパンプレミアとして日本仕様車を公開した。
2020年2月20日に日本仕様車のフルモデルチェンジが発表された(翌2月21日発売)。日本仕様車は9代目同様ハイブリッドモデルのみかつEXグレードのみのモノグレード設定となるが、エンジンをLFB型に換装し、モーターに9代目ハイブリッドモデルと同じH4型とした2モーター方式のハイブリッドシステム「」を採用。WLTCモード走行による排出ガス並びに燃料消費率に対応しており、「平成30年排出ガス基準75%低減レベル(☆☆☆☆☆)」認定を取得している。日本仕様車では9代目・2016年5月マイナーチェンジモデルで導入済みの「Honda SENSING」は後方誤発進抑制機能とオートハイビームが追加された。ボディカラーは9代目から踏襲される「ルナシルバー・メタリック」以外の4色が刷新され、「プラチナホワイト・パール(有料色)」、「クリスタルブラック・パール」、「ブリリアントスポーティブルー・メタリック」、「パッションレッド・パール」が設定された。なお、日本仕様車はタイ(ホンダオートモービル(タイランド))生産の輸入車となる。