BMW・5シリーズ
BMW・5シリーズ("BMW 5 Series" )は、ドイツの自動車メーカー・BMWが製造・販売しているセダンあるいはステーションワゴンである。
5シリーズは5人乗りのセダンもしくはステーションワゴンである。欧州ではセグメントEの大きさに分類される乗用車の代表的なモデルである。
2008年1月には累計生産台数が500万台に達した。車名の後のアルファベットは、iは燃料噴射装置、eはイータエンジン、tはターボエンジン、dはディーゼルをあらわす。
初代5シリーズ。「ノイエクラッセ」と言われた1800/2000系の後継としてデビューした。1977年にマイナーチェンジを行い、グリル、ボンネット、リアコンビネーションランプなどが新しくなり、同時に給油口がリアナンバープレート横から右リアフェンダーへ移動している。欧州では末期に3.5リッターの535iおよびエアロパーツを纏ったM535iが発売される。
日本へはバルコム・オート・トレイディングが輸入していた。正規輸入車の最初期導入モデルは日本の法規に合わせてフェンダーミラーを装備していたが、途中からドアミラーに変更された。
第2世代5シリーズ。6シリーズ(E24系)とプラットフォームを共用する。デザイン面では初代をリファインした感じが強い。当時、BMWは風洞設備を持たなかったために、風洞実験によって設計された同世代のアウディ・100やメルセデス・ベンツ・Eクラスと比較すると空力面での遅れは否定できなかった。このモデルから高性能なM5が販売される。
BMWの日本法人として1981年(昭和56年)に設立されたBMWジャパンが輸入・販売を行っていた。518iA、528eA、533iAのラインナップが当初用意され、その後518iAが520iAに、533iAがM535iAへ変更されたほか、524tdA、M5が追加された。(末尾の"A"はオートマチックトランスミッション搭載の意味。その他アルファベットは上記参照) 日本仕様は環境対策から全車キャタライザー(触媒)付きモデルで、排気ガス規制が遅れていた欧州仕様(触媒なし)に比べ一部を除きパワーダウンした仕様となっており、法規上の理由からヘッドライトの外径がアメリカ仕様と同じ4灯同径規格サイズのシールドビームが採用された。(欧州仕様など、その他地域の仕様は車体外側のLoビームが内側のHiビームに比べ外径が大きくなっている) また、M5は初代M6(E24)と同様にデビュー後しばらくの間は日本へ導入されなかったため、正規輸入された車両は非常に少ない。当時は正規ディーラー網が未整備だったこと、内外価格差が大きかったことなどから並行輸入も盛んで、528i(2.8Lの直列6気筒M30型エンジン…通称ビッグシックス、184馬力)、M535i(触媒なし本国仕様、218馬力)などが並行輸入業者によって販売された。日本仕様の正規輸入車は全て左ハンドルとなるが、南アフリカ共和国の工場で製造された右ハンドル仕様も少数が並行輸入されている。
直列6気筒DOHCエンジン、3,453ccのエンジンを搭載。5MTのみ。M5に搭載されたエンジンは、かのM1のものを改良したもので、最高出力は286馬力(日本仕様は260馬力)を発生。最高速度は250km/hに達し、当時の世界最速の4ドアサルーンであった。キドニーグリル以外の外装メッキモール類のブラックアウト化、及び前席スポーツシートは標準装備だが、BMW Mによるオーダーメイド車両なので、Mテクニックエアロパーツやヘッドライトワイパーの有無・リアシートのヘッドレストが装着されていないなど様々な仕様が存在する。初代M6(E24)同様、発売当初正規輸入されなかったため並行輸入車が多い。1985年に本国デビューしているが、日本では1987年から導入。
1988年に第3世代5シリーズがデビュー。E32型7シリーズと共通する印象のスタイルであった。Cd値は0.30-0.32を達成し従来型から飛躍的に向上した。また、ミディアムクラス(W124)を見習いボディ剛性も大幅に向上させたが、同時に車重も増えW124よりおよそ100kg重くなった車重のために、ドイツでは先代の量販グレードであった518iが切り捨てられた。535iはビッグシックスと呼ばれる名機を搭載した最終モデルである。先に登場した735iにも採用された第3世代DME(デジタル・モーター・エレクトロニクス)制御となり出力の向上を果たしている。
1991年に520i、525iがDOHCに変更するとともに4速ATから5速ATとなった。なお535iは4速ATとなる。
1993年にはマイナーチェンジを行い、V型8気筒DOHCエンジンを搭載する530i、540iが導入されたため、直列6気筒 3.5リッターエンジンを搭載する535iが消滅。V8モデルには熱対策のためにワイドキドニーグリルが与えられた。また、全車に運転席エアバッグを装備。
1994年には直6モデルにもワイドキドニーグリルを与えた。助手席側のエアバッグも標準装備となった。同時に525i、530i、540iにM製のエアロパーツ、スポーツサスペンション、スポーツシート、BBS製2ピースアルミホイールなどを装備したスポーツパッケージが設定される。
5シリーズのサスペンション形式は、第3世代(1988年-1995年)E34の頃までは前輪がマクファーソン・ストラット式、後輪がセミトレーリングアーム式を採用していた。
1988年(昭和63年)、まず日本に導入されたのが、直列6気筒SOHCエンジンを搭載する525i 535iであった。3.5リッターエンジンを搭載する535iは、当時の7シリーズにも搭載された「ビッグ・シックス」という名エンジンを搭載した)。日本に正規輸入されたモデルは以下のようになっている。
E34型M5は1988年に3.6リッター直列6気筒DOHC エンジンに5速MTの組み合わせでデビューした。17inのホイールは市販車では珍しくアルミホイールにエアロディスクを被せたもので、高速域での安定性とともに、欧州車によく見られる多量のブレーキダストを排出する役割も兼ねていた(アルミホイール+ホイールカバーという組み合わせは後にトヨタ・プリウスでも行われた)。
1993年には排気量を3.8リッターに拡大し出力を向上させた。タイヤサイズは変わらないものの、ホイールは一般的なデザインに改められた。そして1994年の改良では6速MTと18inタイヤが採用された。
後期型は出力の強化により、フロントブレーキが大径、4ピストン化された。
最高速度はリミッターによって250km/hに制御される(ちなみに250km/hという数字は、1987年、戦後のドイツ車で初めてV12エンジンを搭載した750iの発売に当たってメルセデス・ベンツとの紳士協定で交わした両社サルーンの最高速度である)。
第4世代5シリーズ。エクステリア・デザインは、BMWのデザイナーである永島譲二。先代よりボディーサイズを拡大したが、空気抵抗係数(Cd値)は0.29-0.30である。アルミ製サスペンション(リアサスはこの代からインテグラルアーム式<5リンク>)を採用し、さらなる安定性および、軽快なハンドリングを実現するとともに、ASC+Tと呼ばれるトラクションコントロールを直列6気筒モデルに装着した。V型8気筒モデルにはASC+Tを発展させたDSCと呼ばれる横滑り防止機構を装備。
パッシブセーフティの面でも充実しており、初期モデルではエアバッグがフロント左右、サイド・エアバッグの4エアバッグであったが最終的にはITSヘッド・エアバッグを含む10エアバッグにもなった。電子制御デバイスの導入にも積極的で、自動防眩機能を内蔵したルームミラーやレインセンサー付きのワイパーなどが装備される。
1996年6月より、日本導入開始。日本仕様として変更が加えられており、本国仕様に対して、
・ダンパーの減衰力を落とす
・日本仕様に専用開発したオールシーズンタイヤ
・タイヤの空気圧を1.8kgf/cm²に設定
などの変更により、ドイツ仕様と比べ、当たりの柔らかい乗り心地となっていた。
また、日本仕様に専用開発されたタイヤのスピードレンジがH(210km/h)に設定されていたため、208km/hで作動するリミッターが装着される他、日本の道路状況に合わせ、ATはJATCO製(本国ではZF)となる。導入当初は直列6気筒モデルにはステップトロニックは装備されておらず、540iにのみ設定されていた。なお、前期型540iのATはGM製である。
1997年には直列6気筒モデルにステーションワゴンのツーリングが追加される。1998年には直列6気筒モデルのトランスミッションがマニュアルモード付きのステップトロニックと変更を受けるとともに可変バルブ機構のVANOSが吸排気の両方に作動するダブルVANOSに進化。同時に、標準装着タイヤが専用開発のオールシーズンタイヤから一般的なサマータイヤへ変更となる。1999年にはBMW Mがデザインしたエクステリアやインテリアを持つ、スポーティーな「Mスポーツ」が初めて導入される。
2000年にはフェイスリフトを行い、1996年から2000年までのモデルが前期、2000年以降が後期となる。後期の外見上の大きな識別点は国内でイカリングと呼ばれる「コロナ・リング」が初めて装備される。直列6気筒(M52)エンジンを一新して、パワーアップを図りつつ排ガスもクリーンになった。2.8リッターが廃止になり528iがカタログ落ちし530iが加わる。M52エンジンから進化したM54エンジンは当時世界最高水準のパフォーマンスを誇った。また、M54搭載車導入と同時に、ATは本国仕様同様のZF製へ切り替わる。
E39型M5は先代まで使用していた直列6気筒エンジンを採用せず、新開発のV型8気筒DOHCエンジンを搭載して馬力は400馬力の大台に乗った。トランスミッションは6速MTのみであった。外装は専用エアロパーツ、専用18inアルミホイールで仕立てられ、内装はレザーであった。最高速度はリミッターで250km/hに制限されるものの、解除することで295km/h以上の速度を出すことができた。
「E60」はセダン、「E61」はツーリング(ワゴン)のモデルコードである。
先代に比べて車体寸法が拡大したが、重量増加を抑えるため、Aピラーよりも前、フロント部分はアルミニウム構造とされた。当初搭載されたエンジンは、直列6気筒は先代モデルに搭載されていたエンジン(M54)の流用、V型8気筒はバルブトロニックを装備した新型のものであり、4気筒2,000ccエンジンや、ディーゼルエンジンもあった。変速機はMTのほか、全てのエンジンに新しい6速ATが組み合わされた。
技術面では「アクティブステアリング」と呼ばれる、ステアリングギア比を走行速度によって変化させる可変ギアレシオ・パワーステアリングが搭載され、これには横滑り防止機構と連動して自動的にカウンターステアを当てる機能も備わっていた。また、「ダイナミックドライブ」と呼ばれる、モーターとスタビライザーを組み合わせによってコーナリング中に左右のロールを抑え、乗り心地と操縦性を確保する機能も設定された。E6X・7シリーズに先行装備された、iドライブ(アイドライブ)と呼ばれる車内快適装備の操作のためのコンピュータシステムも搭載された。
外観デザインはエッジを多用するなどして、従来のBMWとは大きく異なったイメージのものであった。これには賛否が分かれたものの、デザインを革新的なものにすることはBMW社内上層部による決定事項であり、オーナーであるクヴァント家もこの新しいデザインを強く支持していたという。このデザインはクリス・バングルが率いるBMW社内のデザインチームによるもので、実際に採用された作品は、イタリア人デザイナー、ダビデ・アルカンジェリ("Davide Arcandeli" )によるものだった。ただしダビデは、急性白血病によりこの自動車の発売前に死去している。
2005年にはエンジンを一新、直列6気筒にはバルブトロニックが採用され、マグネシウム合金を用いての軽量化や低燃費が試みられた。V型8気筒エンジンは従来の4.4リッターを拡大した4.8リッターと4.0リッターが追加された。同時期にヘッドアップディスプレーをオプション設定され、特別に用意されたボディカラーやインテリア素材でオーダーメイド可能なプログラム、BMWインディビデュアルも開始された。
2007年にマイナーチェンジが行われ、フロントグリル、バンパー、ライト類の意匠変更のほか、トランスミッションも改良され、シフト時のタイムラグが従来の半分となった。530iはエンジンが変更されて出力が向上した。
2003年(平成15年)に販売が開始され、翌年にはワゴンの「ツーリング」と、パッケージオプションとして『Mスポーツ』仕様が追加された。販売された全てのモデルにおいて変速機はATのみの設定であり、アクティブステアリングも標準装備として販売された。
M5として第4世代に相当するE60型M5は、F1技術のフィードバックによる新開発のV型10気筒DOHCエンジンを搭載する。馬力は先代の400馬力からさらに107馬力アップし507馬力である。この507という数字は幻のロードスター「BMW 507」をリスペクトした結果とも言われている。ただし常時507馬力モードではなく、始動時はエンジン保護の理由から400馬力モードであるが「P500」と「P500S」モードを選択することにより507馬力を発生する。
ハンドルに備わるMボタンでは「シフトスピード」、「エンジンマネージメント」、「EDC」などのセッティング内容を割り当てることができ、Mボタンを押すことで瞬時にそのセットアップを呼び出すことができる。またいわゆる隠しモードも存在し、DSCオフ状態でエンジンマネージメントを「P500Sモード」とすることにより、最高シフトスピードが元来の「5」から「6」に変更可能となる。運転席側フロントガラスにエンジン回転数、速度、ナビメッセージなどを映し出すヘッドアップディスプレイも備え、さながらF1パイロットのような気分も味わえる。
変速機は油圧によりクラッチを作動させる、2ペダルMTのセミオートマチックトランスミッションとなる7速SMGを搭載する。米国仕様では7速SMGと6速MTが選択できるが日本仕様はSMGのみ。さらにスタートアシスト機能も加わる。0-100km加速は4.7秒。
外装は専用エアロパーツで、フロントフェンダーにはエア・アウトレットが空いているが機能上の放熱効果はない。リヤのMスポイラーは日本では標準装備だが、海外では選択制。足周りには専用19inアルミホイールが装備されるが、オプションでM6用ホイールも選択でき、リヤのオフセットが張り出していることもありマニア間ではM6ホイールも人気である。M5、M6ホイールどちらともBBS製。
速度リミッターはメーター読み270km/hで作動する。欧州にはワゴン仕様であるM5ツーリングも存在するが、日本国内には正規輸入されておらず製造台数もまたセダンが1万5000台以上製造されたのに対してツーリングは1028台のみの製造と稀少である。
2011年、F10型のM5を発表した。4.4LのV8気筒にツインターボを搭載。M5専用のフロントエアインテーク、ディフューザー、4本だしマフラーを装備し、変速機はDCTとなる。最高出力は560PSを発揮しパワーウエイトレシオは3.3kg/PS。0-100km/h加速は4.3秒。
2016年10月13日、本国においてセダン(G30)が発表された。
新型5シリーズの特徴のひとつは、大幅な軽量化を達成したこと。アルミニウムや超高張力鋼板の使用範囲を増やすことで、先代モデルに比べて約100kg軽く仕上げられているという。
また軽量化に加え、車体の低重心化、前後50:50の重量配分により、優れたダイナミクス性能と長距離移動もラクにこなせる快適性の両立が追求されている。技術面では、数々の運転支援装置が採用された。新型5シリーズでは、アクセル、ブレーキに加え、ステアリングの運転支援を行う機能が採用された。
2017年2月、ツーリングモデル(G31)が発表され、同3月のジュネーブショーで初公開された。
2017年4月、中国市場向けにホイールベースを133mm延長したロングモデル(G38)が発表された。瀋陽にある華晨汽車との合弁工場にて生産される。
2017年6月、本国において5シリーズグランツーリスモ(F07)の後継モデル、6シリーズグランツーリスモ(G32)が発表された。
2017年1月12日、セダン(G30)が日本市場向けに発表された。日本市場へは「523d」「530i」「540i」「530e」及び「523i」の5モデルの導入が案内された。
2017年6月22日、ツーリング(G31)の日本向けモデルが発表された。
2019年7月26日、クリーンディーゼルエンジンを搭載した「523d xDrive M Spirit」「523d xDrive ツーリング M Spirit」が追加された。エンジンはB47D20A型直列4気筒2.0リッター ディーゼルターボエンジンで、最高出力190PS。価格は750万円〜782万円。
2017年8月、高性能モデルとなるM5が発表された。このモデルは別のコードネームF90が与えられる。Mモデルのセダンとしては初めて四輪駆動が採用されている。